2017年1月15日日曜日

冬場に起こりやすいお風呂での突然死「熱中症」

<医療>入浴中の突然死呼ぶ お風呂で起きる「熱中症」

2017/1/15(日) 10:00配信



寒さが厳しくなるこの時期に起こりやすい事故が、お風呂での突然死です。特に高齢者がお風呂で亡くなったケースが最近も相次いで報道されました。そもそもお風呂は体にいいのか、悪いのか。不幸な事故を避ける方法は。よこすか女性泌尿器科・泌尿器科クリニックの奥井識仁院長に聞きました。【医療プレミア編集部】

◇冬場に増える日本の入浴中突然死

東京都内におけるお風呂での高齢者死亡事故の件数が、2015年に報告されています。09~11年の総数3289人のお風呂に関連した死亡者のうち、解剖を実施した550人のケースを検討しています。ほとんどが60歳以上の高齢者で、435人(79.1%)がおぼれて水を飲んでいました。また300人(54.5%)は、循環器系の疾患が死亡に大きな関係があることが突き止められ、さらに250人(45.5%)では心臓病変が認められました。

冬に高齢者に起こる入浴中の死亡事故は、海や川などで起きる溺水とはかなり異なります。前述の研究によると、水を飲んだ兆候がある人もない人も、心臓病変があると死亡事故につながる確率がもっとも高いと報告されています。ということは、お風呂は心臓に悪いということなのでしょうか? それともお風呂の入り方の問題なのでしょうか?

◇お風呂は毎日入る人は、死亡リスクが減る!?

日本人と同じようにお風呂にゆっくり入る習慣がある民族はなかなか見つかりません。そのため研究論文も少ないのですが、フィンランドとイタリア、米国の研究者のチームが出した注目すべき研究成果があります。

フィンランドでは、サウナが一般的です。研究者らは、フィンランド東部に住む42~60歳の2315人を、1984~89年に調査対象者として登録し、その後平均20.7年間の長期追跡調査を行いました。この観察期間にいろいろな原因で死亡した人(全死因死亡)は929人、そのうち190人に心臓突然死、281人に致命的な冠状動脈性心疾患、407人に致命的な心血管疾患がありました。

この研究によると、心臓突然死は1週間に1回のサウナ入浴をしている男性を1とすると、週2~3回入浴する人は0.78、週4~7回の人は0.37とその割合が少なくなっています。さらに、サウナの回数が増えると、致命的な冠状動脈性心疾患、致命的な心血管疾患、および全死因死亡リスクまで低下することがわかりました。

この結果からは、お風呂そのものは体によく、心臓や血管のためにはなるべく毎日入った方がいいと言えそうです。そうなると、日本で報告されているお風呂での突然死の原因は、お風呂の入り方にあると思われます。

◇危険なのは「湯船で起きる熱中症」

改めて高齢者がお風呂に入ったときのリスクを考えてみましょう。循環器や心臓に病気がある人がお風呂に入ると、皮膚の表面の血管が広がります。すると手足に血液を取られ、脳の血液が少なくなって、血圧が急激に低下します。脳に血液が足りないと、意識がもうろうとし、その結果、危険な状態を察知できないまま、お風呂の中で体が熱をどんどん吸収して、熱中症を起こします。脈が速く、かつ弱くなるという特徴があり、めまい、一時的な失神、顔面蒼白(そうはく)などの症状が生じ、意識を失っているうちに、溺水する可能性もあります。

このような血圧の変化は、冷えた体でお風呂に入ると起こりやすいと考えられます。また、お湯の温度が42度を超えると入浴直後の1~2分で急激な血圧上昇が起こる可能性があります。その後は前述のように血圧が下がるため、その時の血圧変動の幅が大変大きくなります。その場合、さらに意識低下、そして熱中症のリスクが高まりますし、急激な血圧変動は脳梗塞(こうそく)を起こすことも考えられます。

◇適切な準備をしてお風呂に入ろう

さまざまな研究から言えることは、入浴中の突然死を防ぐには、お風呂に入る前の準備が大切だということです。

1)脱衣室や浴室の室温を24~26度程度に維持する。

2)お風呂のお湯の温度は高すぎない41度以下にする。

3)入浴中に水分を取ることができるように浴室に水を持って入る。

4)お湯につかる時間は10分以内を目安にする。

5)浴槽から急に立ち上がらないようにする。

といったことが事故の予防策になるでしょう。入浴前に家族に声をかけるのも事故予防に役立ちます。また、アルコールを飲んだ状態での入浴は危険です。

参照元 : 毎日新聞



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