2017年1月10日火曜日

金銭や名誉ではなく、目の前の仕事のやりがいに燃える人の方が長生きする?「病気になりやすい性格」

性格と長寿の関係、悪口な人は心臓病・肺がんになりやすい

2017.01.07 07:00



性格と長寿の相関関係をめぐっては多くの研究成果が報告されているが、画期的とされたのが2011年に米国で発表された「長寿プロジェクト(The Longevity Project)」である。この研究が注目されたのは、大規模な対象者集団を幼年期から晩年までの長きにわたって追いかけた「80年追跡研究」だったからだ。

◆「仕事人間」は長生きできる

追跡研究は日本でも行なわれている。東北大学大学院医学系研究科教授・辻一郎氏の研究グループは1994年、宮城県大崎保健所管内の40~79歳の約5万2000人に対し性格や生活習慣を問うアンケート調査を実施。その後12年間にわたって生存状況を追跡した。

辻氏らは「日常生活の中で大切なもの」を対象者に聞いた。そこでは、「仕事」と答えた人の死亡率が11%と最も低かった。死亡率が最も高かったのは、「名誉」と答えた人(28%)だ。辻氏は著書『病気になりやすい「性格」』(朝日新書)の中でこう記している。

「仕事に励んだことで『金銭』や『地位』『名誉』も得られるだろうし、それを目標に頑張る人もいるだろう。ところが、その3つが大切だと答えた人の死亡率は高かった」

金銭や名誉ではなく、目の前の仕事のやりがいに燃える人の方が長生きする可能性が大きいということだ。

長生きは本当に「めでたい」ことなのか。歳を重ねれば体の不調や気力の落ち込みを実感することも増える。各界で活躍を続ける90代は、自らの“老い”とどう向き合い、折り合いをつけているのか──。

落語芸術協会の最高顧問である桂米丸(91)は東京・中野の自宅から地下鉄に乗って新宿の寄席・末廣亭の近くまでやってきた。弊誌・週刊ポストを手に取ると、若い頃と変わらぬツヤのある甲高い声で、「年寄りにはちょっと刺激が強いね」と笑った。米丸が「90歳」を語った。



80歳になる直前に心筋梗塞が見つかり、「このままだと1か月持たない」と医者にいわれたね。それ以来、こっち(酒をあおる仕草をしながら)をきっぱりやめて、1日3食しっかり取っているけど、90歳になる時は黄疸になった。歳を取ると五臓六腑のどこかが悪くなるんだよ。

それでも、ここまで落語を続けられたのは師匠(5代目古今亭今輔)から「古典は上手な人が多いから、新作落語をやりなさい」と教えられたからです。師匠は自分の新作の十八番をどんどん弟子に教えて、他の師匠から「自分がやる噺がなくなるぞ」と心配されても、「いいよ。また十八番を作るから」と返す方で、ものすごいエネルギーと自信の持ち主だったね。

そんな師匠の教えを守り、今でも新作を作ってますよ。古典は覚えたものをずっと先まで使えて、やればやるほど上手になるけど、未完成の状態で披露して客の反応を見て内容を変えていく新作はそうはいかない。生活様式や社会はどんどん変わっていくので、新作は100本作って1本残ればいいほうです。

ウケる奇抜な話を作っても、すぐに現実が追いついてきちゃうのが悩みだね。鼓膜に穴が空いた人が、“細胞が再生して障子みたいに張り替えられたらいいのに”と話すネタを作ったら、医学が進んで実現しちゃった。車が自動運転になるネタや、大阪では関西弁のナビが活躍するというネタも現実になった。新作はそんなことの繰り返しだよ。

それでも、僕は現実の一歩先のネタを作ろうと、今も月に10日ほど高座に出ている。師匠から「腐らない新作を作れ」と教えられたし、90歳になったからと休んでいる場合じゃないから。若い者のために出番を減らそうとも思いますが、こう見えても落語家だから、ネタができるとみんなの前で話したくなってしまう。まったく因果な商売です。

ただね、最近はわかりきっているはずのことが言葉として出てこない。高座でも自然にど忘れして、「……あれですよ、あれ」とやっちゃう。新作落語の登場人物が「佐藤さん」だったのに、話の最中になんだかよくわからなくなって、「斎藤さん」に変わっちゃうこともある。お客さんは途中で気がついてバカ受け。90歳のジジイだからしかたないんでしょうが、なんか複雑な気持ちだね(苦笑)。

長生きも難しいよ。周りは“いい加減にしてくれ”と思っているかもしれない。10年前は90を超えたら大事にされたけど、人数が多くなると扱いが雑になるんじゃないか心配だねぇ(笑い)。

春になるともう92歳だけど、いつまで高座に出ようか……。高座の最高年齢記録に挑戦しているわけではないけど、見ていて痛々しいとか見苦しいのは嫌。出ている時だけは“格好をつけて”落語をやりたい。それができるうちはまだ高座に上がりたいね。

●かつら・よねまる/神奈川県横浜市生まれ。東京都立化学工専卒業。1946年に5代目古今亭今輔に入門、1949年に真打昇進。1998年に勲四等旭日小綬章を受章。落語芸術協会最高顧問。出囃子は『金比羅舟々』。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

参照元 : NEWSポストセブン

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