2018年8月27日月曜日

【米調査】若者のADHD増加とSNS依存症の関係 ネットの使用過多が注意欠陥・多動性障害(ADHD)を誘発

【警告】若者のADHD増加はネットのせいだった!? SNS好きほど“兆候アリ”、社会はADHDだらけに… 危機的実態が判明=米調査

2018.08.27

インターネットの使用過多が注意欠陥・多動性障害(ADHD)を誘発している、との研究結果が出た。特に、ソーシャルメディアを多用する10代の若者たちがADHDにかかる例が多く見られるという。

■疑われるSNS依存症とADHDの関係

インターネットやソーシャルメディアを世界から無くすことなど不可能だろうが、この研究結果を見ると、頻繁にインターネットに頼りがちな現代社会の様子は健康面から考えると非常にまずい事態といえる。

米カリフォルニア州では15歳と16歳の2500名を対象にアンケート調査を行い、インターネット視聴習慣について実態を探った。調査開始当時は、ADHDと診断される人はいなかった。ところが調査年数を重ねるごとに「ADHDの兆しあり」との診断結果に変化する人が増えたという。

ADHDの特徴として、注意力の散漫が挙げられる。彼らは精神が集中状態の時は没頭できるという特徴を持っている。タスクを彼らに与える側はそれに期待し簡単な仕事を与えたりもするのだが、ADHDにかかっている当人たちはいざタスクを引き受けても、ほんの些細なことをきっかけに集中力を失い、結局タスクをなかなか完了できない。



本人としては自分なりに頑張って仕事に取り組んでいるのだが、途中で気が散り、混乱してしまうという。これでは仕事を与えた側も混乱するため、まさに悪循環である。

現時点では、調査に参加したうちの7パーセントの若者たちがADHDにかかった、との報告が挙げられている。そして、彼らがそのまま成長し、社会に出てくる頃には、また新たな10代の若者たちが同様の状態を迎えることになる。すると、どうなるか? 社会にも学校にも、どんどんADHDに悩む人が増えてくることは安易に想像できるだろう。



こうした現状を憂慮した南カリフォルニア大学の心理学者は、今こそソーシャルメディアとADHDとの因果関係を熟考しネット使用について再考する時期に差し掛かっている、と警鐘を鳴らしている。

■ネットへのアクセスが多い者から順にADHDへ

先の調査に応じた若者たちは、インターネット使用の理由として、第一にソーシャルメディアの多用を挙げた。ショートメッセージや動画視聴という回答も目立った。半年ごとに調査を行い続けた結果、全員ではないながらも、ネットへのアクセスが多い者から順にADHDにかかっていく傾向が見られたという。

インターネットにアクセスするもしないも本人の意思によるため、周りは誰もそれを規制できない。本人が自己責任のもと、アクセスしたいだけする。配信側も、さまざまな仕掛けを施し、ユーザーがついクリックしたくなるよう工夫を散りばめる。 ミシガン大学の小児科医は次のようにアドバイスする。

「いいですか? 皆さん。せっかくの青春時代ですよ? 青春を彩るにふさわしい生活を送ることを真っ先に優先すれば、インターネットにかじり付かなくても心身ともに満たされる日々を送れるのです。夜は深く眠り、昼は楽しく体を動かし、宿題を済ませ、家族や友達とは直接会う方法で交流する。生活におけるこうした基本的な事項を優先させることが大事なのです」



まさに基本中の基本と言えるが、そもそもADHDは注意力が散漫になり多くのことに対して気が向いてしまうという特徴があるので、この基本事項をこなす生活スタイルこそADHD患者に適しているのではないだろうか? 向いていることから着手するのは、本人にとっても周りにとっても負担が少ないだろう。

もし、自らの中にADHDの兆候を感じたり、また、周囲の者に対して感じることがあれば、一度Wi-Fiを切り、こうした人間らしい基本的な営みを一定期間してみると、求めていた効果を得られるかもしれない。

(文=鮎沢明)

参考:「Science Alert」、ほか

参照元 : TOCANA


注意欠陥・多動性障害



注意欠陥・多動性障害(ちゅういけっかん・たどうせいしょうがい、英: Attention-deficit hyperactivity disorder、ADHD)は、多動性(過活動)や衝動性、また不注意を症状の特徴とする神経発達症もしくは行動障害である。こうした症状は教室内で最年少だとか、正常な者、他の精神障害、薬物の影響でも一般的であるため、機能障害や苦痛を感じるなど重症で、幼い頃から症状があるなどの鑑別が必要とされる。

上記の診断名は1994年からのDSM-IVのものである。以前のDSM-IIIの注意欠陥障害(attention-deficit disorder:ADD)や、ICD-10の多動性障害(hyperkinetic disorder)を継承するもので、口語的には多動症(hyperactivity)などと呼ばれてきた。2013年のDSM-5では、訳語について、欠如(けつじょ)に代わった注意欠如・多動性障害でありこれは日本精神神経学会が2008年に示し、注意欠如・多動症は小児精神神経学会や日本児童青年精神医学会の示したDSM-5の翻訳案である。またDSM-5で成人への診断が追加された。

その症状が、正常な機能と学習に影響を及ぼしている場合のみに診断する。症状は早い時期(6歳未満ごろ)から発症し、少なくとも6か月以上継続している必要がある。DSM-5はそれまでの7歳までの発症を12歳とし、遅発性の発症を含めたがこのことは誤診の可能性も増やしている。また、小児発症が成人ADHDの重要な診断基準であったが、2016年には小児期ADHDと成人期ADHDは異なる経過を持つ異なる2つの症候群だと示唆されている。つまりまだ明確となっていない部分がある。診断は、多くの精神障害と同様に問診等で行われやすいが誤診も起こしやすく、診断を補助するための評価尺度は存在し、生物学的指標はない。ADHDの医学的なあり方、アメリカでの推定有病率を数倍上回る診断数である過剰診断や、投薬に対する議論のため、ADHDに関する論争が盛んである。

遺伝的要因が76%とされるが、分離が洗練されておらず家庭という環境要因が含まれてしまっていることに注意が必要である。学童期までの発症率は1 - 6%で男子の方が女子よりも高い。特に男子では多動性と衝動性しかみられず、特に女子では不注意しかみられない場合がある。ICD-10での多動性障害の発症率は学齢期で3〜7%であり、その内30%は青年期には多動と不注意は目立たたなくなり、40%は青年期以降も支障となる行動が持続し、残りの30%は感情障害やアルコール依存症などのより重篤な精神障害が合併する。ある調査では約3割が大人になっても症状が続いていた。

治療では、世界保健機関や日本のガイドラインでは児童へは心理療法が優先される。心理療法では認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング、また親の接し方の練習であるペアレント・トレーニングといったものがある。児童における大規模なMTA研究にて1年時点で見られた投薬の優位性は、2年以上の投薬では行動療法などと差が見られず疑問が呈されており、他の長期研究でも長期の投薬による利益は報告されていない。

定義
精神医学的障害の一種である。

症状
衝動性(impulsive)・過活動(hyperactive)・不注意(inattentive)などの症状が確認される。典型的には生まれつきのように症状が存在する[4]。通常の人々にも広く一般的にみられる症状であるため、症状が合致するだけでは不十分であり、若年から症状が継続し、発達過程において不適切に持続しており、特定の状況だけで見られるのではない必要がある。

子供ではICD-10による多動性障害(たどうせいしょうがい)の診断名が適用されることもある。

不注意(inattention)には、以下の症状などがある。

・簡単に気をそらされる、細部をミスする、物事を忘れる
・ひとつの作業に集中し続けるのが難しい
・その作業が楽しくないと、数分後にはすぐに退屈になる

過活動(hyperactive)・衝動性(impulsive)には、以下の症状などがある。

・じっと座っていることができない
・絶え間なく喋り続ける
・黙ってじっとし続けられない
・結論なしに喋りつづける
・他の人を遮って喋る
・自分の話す順番を待つことが出来ない

年齢が上がるにつれて見かけ上の「多動(落ち着きがない、イライラしているように見えるなど)」は減少するため、かつては子供だけの症状であり、成人になるにしたがって改善されると考えられていたが、近年は大人になっても残る可能性があると理解されている。その場合、大抵、一見して分かるような症状は弱くなっており、目に見える多動よりも、感情的、精神的な衝動性(言動に安定性がない、順序立てた考えよりも感情が先行しがち、会話で話が飛躍しやすい)や注意力や集中力の欠如(シャツをズボンから出し忘れる、シャツをズボンに入れ忘れる、ファスナーを締め忘れるといったミスが日常生活で頻発する、など)などが目立つようになるとされる。

幼少期において、男子では多動性と衝動性のみ、特に女子では不注意のみの症状が目立ちやすい、ないし問題視されやすい、逆にそれ以外の症状が見過ごされやすい、ないし問題視されにくい場合がある。過活動、衝動性が顕著でないADHDであって、不注意のみが目立つ場合、幼少期には周囲、または自分がADHDであることに気付かない場合も多い。

原因
2018年現在、決定的な原因はないとされている。

双子研究により、原因を遺伝要因と環境要因に分けることができるが、ADHDの遺伝要因(遺伝率)は約76%と大きい。ADHDの子供の兄弟は、ADHDでない子供の兄弟より3倍から4倍ADHDになりやすい。抑制や自制に関する脳の神経回路が発達の段階で損なわれているという点までは確からしいが、その特定の部位・機能が損なわれる機序は仮説の域を出ない。

しかし、貧困や教育様式など家庭という環境要因を遺伝要因から分離するのは困難であり、まだその分離が洗練されていないことに注意が必要である。離婚、貧困、教育様式、養育者の教育水準の低さ、社会福祉、性的虐待、睡眠不足、食品添加物、携帯電話の使用など様々な要因が挙げられ、それらが相互作用している。

脳の部位説
機能不全が疑われている脳の部位には、大きく3箇所ある。ADHDの子供達は健常児に比べてこれらが有意に縮小していることが見出される。

右前頭前皮質
注意をそらさずに我慢すること、自意識や時間の意識に関連している
大脳基底核の尾状核と淡蒼球
反射的な反応を抑える、皮質領域への神経入力を調節する
小脳虫部
動機付け
多くの研究者が、複数の遺伝子異常がこれらの部位の萎縮に関係しているのではないかと考えている。

2011年、注意欠陥多動性障害の子供は、健康な子供が同じゲームをして働く脳の中央付近の部位の視床と線条体がほとんど働かないことを、理化学研究所分子イメージング科学研究センターなどの研究グループが突き止めたと報道されたことがある。

神経基盤説
1990年に米国のNIMHのザメトキン (Zametkin) らのグループは、PETスキャンを用いて、ADHDの成人25人の脳の代謝活性を測定し、対象者群より低下していることを明らかにして、ADHDが神経学的な基盤を持っていることを目に見えるかたちで証明した。具体的には、健康な前頭前野は行動を注意深く選定し、大脳基底核は衝動性を抑える働きを持つが、ADHDのケースではそれがうまく働いていない。

食事説
食事とADHDとの関連性について指摘する報告がある。アメリカやイギリスでは食品添加物などを除去した食事の比較が行われている。2007年にイギリス政府は、食品添加物の合成保存料の安息香酸ナトリウムと数種類の合成着色料が子供にADHDを引き起こすという研究を受け、これらを含むことが多いドリンクやお菓子に注意を促している。2008年4月には、英国食品基準庁 (FSA) はADHDと関連の疑われる合成着色料のタール色素について2009年末までにメーカーが自主規制するよう勧告した。ガーディアン紙での報道では大手メーカーは2008年中にそれらを除去する。

自主規制対象のタール色素:赤色40号、赤色102号、カルモイシン、黄色4号、黄色5号、キノリンイエロー
2006年、5000人以上と規模の大きい研究で砂糖の多いソフトドリンクの摂取量と多動との相関関係が観察された。

睡眠
最近の睡眠科学では、睡眠がADHDの増加に大きく関わっていると言われている。

有機リン系化合物の影響
米国の子供を調査した結果、因果関係は不明であるものの、尿中のジアルキルリン酸塩(英語版)濃度、特に代謝物のジメチルアルキルホスフェート (DMAP) 濃度とADHDの診断率に関連が示された。

診断
よく使われている診断基準(統計調査用)は、アメリカ精神医学協会が定めたDSM-IV (1994) とその改訂版のDSM-IV-TR (2000) のAD/HDであり、不注意優勢型と多動衝動性優勢型と、その混合型という3つのタイプに分けられる。2013年にはDSM-5が出版されている。

1994年に改訂されたWHOの診断基準のICD-10は、「多動性障害」の診断名であり、注意の障害と多動が基本的特徴で、この両者を診断の必要条件としている。ICD-10の「多動性障害」は、細部では若干の違いがあるものの、DSM-IVのADHDの「混合型」に匹敵する。

DSM-IV-TRの診断基準

不注意(活動に集中できない、気が散りやすい、物をなくしやすい、順序だてて活動に取り組めないなど)と多動-衝動性(ジッとしていられない、静かに遊べない、待つことが苦手で、他人の邪魔をしてしまう等)が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に、強く認められること
症状のいくつかが7歳以前より認められること
2つ以上の状況において(家庭、学校など)障害となっていること
発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が著しく障害されていること
広汎性発達障害や統合失調症など他の発達障害・精神障害による不注意・多動-衝動性ではないこと

上記すべてが満たされたときに診断される。DSM-IVではMRIや血液検査等の生物学的データを診断項目にしていない。

DSM-5(2013)の診断基準も、ほぼ踏襲しているが、一部に変更があった。

破壊的行動障害や反抗挑戦性障害と並列された分類から神経発達障害(先天的な脳の神経発達異常)のカテゴリーに移行。先行して日本で「発達障害者支援法」(2005)が採用する分類と同等になる。
子どもだけの障害という印象を薄め、年齢を問わず発症する障害との視点。
7歳以前から12歳以前へと兆候が見られた年齢を引き上げた。
自閉症スペクトラム障害との合併、併存を認めた。
不注意優勢型と多動衝動性優勢型、混合型のタイプ分けを廃止。
過去半年の症状から、混合状態、不注意優勢状態、多動性衝動性優勢状態を評価し、部分寛解もありうるとした。
重症度を軽度・中度・重度の3段階に評価するようになった。
一方、フランスの児童精神科医は生物学的医学に支配された考えではなく、DSMに対抗する診断分類であるCFTMEA(Classification Françaisedes Troubles Mentaux de L'Enfant et de L'Adolescent)を用い、症状の背景に心理社会的な原因を見る。

成人ADHD
成人ADHDでは小児発症型ではない可能性が高いが、小児の神経発達に分類されているため再考される必要があるかもしれない。小児発症が成人ADHDの重要な診断基準であったが、小児期ADHDと成人期ADHDは異なる経過を持つ異なる2つの症候群だということが示唆されている。

評価尺度
診断を補完するための評価尺度には、ADHD Rating Scale-IVやその日本語版ADHD-RSなどがある。

成人ADHDでは22%に症状の誇張があり、誤診を避けるために、90%以上の感度のある尺度の使用が必要である。

ほかの障害との併存と鑑別
明らかな機能障害や苦痛を引き起こしていなければ、症状が正常な範囲である可能性がある。4歳では正常な未熟である。DSM-5では、発症年齢を12歳と遅くしたが、典型的には症状は生まれつきであるため、同様の症状を起こす他の原因と誤解が生じる可能性があり、成人では特に慎重であるべきで、遅発性では薬物が原因の症状だということも疑える。あるいは他の精神障害が原因となっていることもある。特に成人では、薬の娯楽目的、転売目的の場合で受診している場合がある。マイケル・ムーアは、映画シッコにおいて、重篤な疾患を抱えた大勢の国民が治療を受けられずに放置されているなか、あなたは不安症ではないか、注意欠陥障害ではないか、とメディアが国民の不安を煽る現状にも触れている。

適応障害では、混乱した学校環境、家庭のストレスなどへの反応であるなど、特定の状況に生じている。両親や教師など周囲の大人が完ぺき主義、あるいは子供に過剰な期待をしており、そうした環境が破壊的な場合にADHDが過剰診断されやすいが、大人の期待の再構築、環境調整が必要となる。

ADHDをもつ児童は、他の精神障害が並存する確率が66%増加する。関連障害として特異的発達障害(学習障害)や、軽症アスペルガー障害との合併を示すことがある。またその特性上周囲からのネガティブな打撃を受けやすく、二次的に情緒障害を引き起こす傾向があり、行為障害、反抗挑戦性障害、不登校やひきこもりを招きやすい。

不眠症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群のような睡眠障害は、ADHDに似た症状を起こすことがあり、疼痛も睡眠の問題を起こすことがある。

他の発達障害
学習障害(LD)はADHDを持つ子供の約20-30%に見られる。学習障害は発音・言語の発達と学習スキルの障害が含まれる。

他の情緒障害
トゥレット障害は、ADHDを持つ人においてさらに一般的である。
反抗挑戦性障害 (ODD) と 素行障害 (CD)は、ADHD患者においてはそれぞれ約50%、20%ほどリスクが高い。素行障害では規則違反を起こし、反抗挑戦性障害では権力に逆らう。
夜尿症 - 一般の15歳以上で夜尿を起こす割合は1%程度とされているが、ADHDで夜尿症を発症する割合は約3割にものぼるとされる。

気分障害
うつ病は主に周りのネガティブな反応に対して二次障害として併発する。抑うつによる注意力散漫と鑑別する必要がある。
双極性障害はうつ状態における注意力散漫、躁状態における易怒性や衝動性、気分の波など表面上の症状は類似している。またADHD患者の11%は双極性障害を併発している。
重篤気分調節症は主に子供に対する双極性障害の過剰診断(英語版)を減らす目的でDSM-5に掲載された気分障害である。ADHD、双極性障害、反抗挑戦性障害に症状が類似している。

パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害
短時間に気分が急速に変化する、対人関係の障害、強い衝動性や自己破壊行動といった点で類似している。鑑別方法としてはADHDの場合は幼少期から特徴がみられる、見捨てられ不安が目立たないなどの違いがある。境界性パーソナリティ障害の患者の16.1%に成人ADHDが見られたとの報告もある。境界性パーソナリティ障害の患者の多くは虐待を経験しており、ADHDであることを知らずに親の抑圧的な教育を受けていることが原因の一つともいえる。一方では併存していると思われた例にADHDに対する薬物治療を開始したところ、敵意や猜疑心が消失したとの報告もあり、実際には誤診断されているケースもままあるとみられる。

反社会性パーソナリティ障害
行為障害を併発したADHD患者のうち一部は寛解せずに反社会性パーソナリティ障害に移行する。

その他の疾患
てんかん - ADHDを持つ児童のうち約3割が脳波異常、特にてんかんやナルコレプシー(以前は睡眠てんかんとも称した)に似た脳波を記録することが確認されている。 甲状腺機能亢進症、薬物乱用、アルコール乱用などによる注意力低下や衝動性を除外する。 また保護者におけるうつ病を確認し、存在すれば適切な処置を行う。

過剰診断の問題
2010年の米国では、ADHDと診断された児童450万のうち100万人が不適切な診断、誤診である可能性が指摘されている。製薬会社のマーケティングの影響で診断数は膨れ上がってきている。DSM-5(2013年)より、さらに成人への診断が緩和され診断が流行となり、薬の過剰処方がもたらされる可能性がある。

仕事に飽きがきているとか、完ぺき主義とか、集中力や遂行能力に不満があるだけの正常な人にレッテルが貼られ、他の原因によって症状が出ている人、そうした原因を排除しない限り不当な精神刺激薬による治療によって問題が悪化しかねない。 DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は、製薬会社に利用されるような診断名の追加は退けたと思っていたが、マーケティングは容易くこれを突破してしまい、DSM-IV発表以降、米国で注意欠陥障害が3倍に増加したことについて、「注意欠陥障害は過小評価されていると小児科医、小児精神科医、保護者、教師たちに思い込ませた製薬会社の力と、それまでは正常と考えられていた多くの子どもが注意欠陥障害と診断されたことによるものです」と指摘している。カナダの研究によれば、注意欠陥障害の最も正確な予測因子の一つは入学月である。9月入学のカナダでは8月生まれの子どもがクラスで最年少になるが、最年少ゆえの未成熟な行動が異常と判断されてしまう場合がある。こうした傾向はアメリカ、台湾、アイスランドの研究でも同様で、単なる未熟性が病気のように扱われてしまっている。フランセスは、「米国では、一般的な個性であって病気と見なすべきではない子どもたちが、やたらに過剰診断され、過剰な薬物治療を受けているのです」と述べている。これは日本も同様である。注意障害雑誌を創刊し、またMTA研究を主導したキース・コナーズも、過剰診断と精神刺激薬の過剰処方に注意を促し、こうしたことは他の精神衛生上の問題を見えなくしてしまっていると感じていた。

国連子どもの権利委員会は、注意欠陥多動性障害(ADHD)が、薬物治療によって治療されるべき疾患であるとみなされていることを懸念し、診断数の推移の監視や調査研究が製薬会社と独立して行われるようにと提言している。アメリカでは製薬会社による販売促進によって、5%の推定有病率を超える、子供の15%がADHDの診断を受けており、投薬から明らかに恩恵を受ける子供の割合は1%を超えないと考えられる。例えばアデロールの製薬会社は、ヒーローが薬について言及している漫画を5万部配った。アメリカ疾病管理予防センター (CDC) は、行動療法が優先されるが、75%が投薬を受けていることに注意を促している。

管理
世界保健機関のガイドラインでは、児童青年のADHDへの第一選択肢は心理療法(心理教育、ペアレント・トレーニング、認知行動療法など)であり、薬物療法は児童青年精神科医の管理下でのみ行うことができ、かつ6歳未満に対しては投与してはならない。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、4-5歳のADHDに対しては、薬物療法の前にまず心理療法を実施するよう勧告している。一方でCDCは、6–17歳のADHDに対しては、薬物療法と心理療法の両者を実施するよう勧告している。

一方で英国国立医療技術評価機構(NICE)は、未就学児においては薬物療法を推奨しておらず、就学児童および青年においては第一選択ではなく重症の場合の選択としている。

日本での2016年のADHDの治療ガイドライン4版は、薬物療法が中心となっていた以前の2008年3版と比較して、心理社会的治療が大幅に充足された。子供へのソーシャルスキルトレーニング (SST)、親へのペアレント・トレーニングなど心理社会的治療や、学校との連携など環境調整が優先され、薬物療法ありきの姿勢は推奨されない。

アメリカ国立精神衛生研究所 (NIMH) が出資した、7歳から9歳の600人近い子供を追跡した大規模な研究であるMTA研究が実施された。それまでの研究に一般的な4か月以内の研究より長期であり、行動療法、薬物療法、またその併用を比較するための試験であった。14か月時点では薬物療法と併用では、他の方法よりも症状を改善しており、またこの時点で薬物療法の4%に精神刺激薬の重篤な副作用による中止があり、食欲喪失、睡眠の問題、泣き叫ぶ、反復運動といったもので、さらに薬物療法では身長と体重の成長に遅れがあった。3年後では、ほとんどの人々に改善が維持されていたものの、行動療法などとの治療利益には差がみられなくなっていた。並存疾患の発生率も3年後では差がない。

8年後でも投薬した群に恩恵あったというわけではなかった。8年では医薬品を用いなかった人も同様の機能水準があったため2年以上の薬物療法には疑問が持たれた。91%が精神刺激薬(メチルフェニデートなど)を含む治療である。14か月時点で投薬を受けていた人の61.5%は、8年の間に投薬を中止していた。16年目では長期的な投薬は症状の重症度の低下に結びついておらず、1-2センチの身長の成長の抑制と関連していることが分かった。投薬や教育サービスはむしろ不利な傾向を示しており、問題が悪化した子供ではより多くの治療が施されたのではという議論も生じている。時間と共に全被験者に改善の傾向が見られた。(#経過も参照)

フランスでは、心理療法や家族カウンセリングを実施し、実際に問題を解決すると真にADHDに診断される児童は少ない(0.5%)ということである。フランスでの心理社会的な手法は包括的に取り組まれ、食事では合成着色料、保存料、食物アレルギーが症状を悪化させていないかといったことにも着目し、子育ての方針においても子供を管理するために薬を使うのではなく、はっきりとしたルールの中で耐えることを学ばせることが定着している。

心理療法
家族には心理教育、ペアレント・トレーニングを行う。本人の症状をコントロールすることよりも本人の特性にあった環境を整えることが重要である。ペアレント・トレーニングは、症状を持つ児童への接し方を親が学ぶということである。

児童青年のADHDには、WHOおよびNICEのガイドラインでは認知行動療法(CBT)およびソーシャルスキルトレーニング (SST) を提案している。また成人においては、NICEは患者が薬物療法を希望しない、または薬物療法の効果が乏しい際にCBTを検討するとしている。

認知行動療法に関してはセルフヘルプのできるワークブックも利用できる。SSTは困っていることを、上手にこなせるように実際に練習してみるということである。

さらに、ADHDを持つ子どもへは、Summer Treatment Program (STP) などの治療プログラムの実施が有効であり、参加したすべての子どもに行動改善が認められ、ADHDの症状が有意に改善するとされている。また、ADHDを持つ成人へも、薬物療法と並行して、心理教育・動機付け面接技法・認知行動療法(活動スケジュール表の利用・問題解決法・認知再構成法などを含む)・ソーシャルスキルトレーニング (SST) などから構成される、ヤング・ブランハム・プログラムなどの治療プログラムを実施することが、認知・行動の改善と症状の治療に有効であるとされている。

なお、二次的な症状として、不安障害やうつ病、不眠症などの症状が生じる場合も多く、その場合はADHDの治療と並行してそれらの症状への治療を行い本人をサポートする(「不安障害#治療」、「うつ病#治療」、「不眠症#治療」などを参照。これらの治療も、ADHDの特質を踏まえつつ行うことが重要である)。

認知行動療法
ADHDの認知行動療法では、下記の技法などが用いられる。治療や支援を行う際には、本人の症状・年齢・環境・併存障害の有無等に応じて、下記の技法などを統合して包括的かつ効果的な介入プログラムを立てることが重要である。

認知行動的介入:随伴性マネジメント、ソーシャルスキルトレーニング (SST)、ペアレント・トレーニング、トークンエコノミー、活動スケジュール表の利用、問題解決法、仲間教示法、行動契約、教室行動マネジメント、先行条件の変更、学業スキル訓練(順序立てスキル、勉強スキル、ノート取り、行動と誤りのセルフモニタリング)
行動的介入(後発事象のコントロール):正の強化、負の強化、罰、タイムアウト、消去法
認知的介入:認知再構成法、セルフトーク、葛藤解決、怒りのマネジメント法(アンガーマネジメント)
社会的方法
環境変容法
注意をそらす物を周りに置かない。

家庭での配慮
家庭では、勉強をしているとき外的刺激を減らしたり、子供の注意がそれてしまった時に適切な導きを与えてやったり、頃合いを見計らって課題を与える、褒めることを中心にして親子関係を強化するなどが挙げられる。一例として、「勉強しなさい」と言うよりも机の上にその子供の注意を引きそうな本をさりげなく置いておく、新聞や科学雑誌を購読する等である。

薬物療法
WHOは、正しく診断されたADHDに対してはメチルフェニデート製剤の薬物療法を用いるとするが、薬物療法は対症療法であり根治を目指すものではなく、専門医の指示の下で行うべきであり、相談なくプライマリケアでは処方してはならないとしている。薬物療法は継続的な心理行動への包括的介入の一部でなければならない、とくに子供の場合は6歳以上で心理行動療法に効果がなかった場合に慎重に使う、としている。

成人のADHDについては、NICEは薬物療法を第一選択肢とするべきだと勧告している(患者が心理療法を好んだ場合を除く)。薬物乱用ポテンシャルのある患者についてはアトモキセチンを提案している。

MTA研究以外の長期的な研究も長期的な医薬品の利益を報告しておらず、3-5歳の子供を6年追跡したPATS研究では、投薬の恩恵は見いだせなかった。

コクラン共同計画による小児ADHDにおけるメチルフェニデートの効果に関するシステマティックレビューでは、治療期間は平均75日と非常に短く、証拠の品質が低いので医薬品の影響の大きさを特定できなかった(有益なのか明らかとならなかった)。死亡や致死的な副作用は増加していないが、睡眠障害が1.6倍、食欲低下が3.6倍であり、副作用の評価のためにはより堅牢な試験が必要とされることが結論されている。成人ADHDでのメチルフェニデートのシステマティックレビューは批判のため2016年に撤回されており、不明確のリスク評価に対して信頼性が高いとしたり、11研究の内2つだけが抑うつなど並存疾患のある被験者をはっきりと残していたため一般的な効果であるかの妥当性が損なわれており、試験期間は1-7週間であり小児研究で観察されているように効果は時間と共に減少してもよく証拠の格下げにつながってもよかったといった理由があり、評価のために偏りのない長期研究が必要とされる。

子供のためのADHD治療薬の承認のための試験では、精神病や躁病は1.48%に出現し、虫、昆虫、ヘビの幻覚が一般的であった。異なる条件である、うつ病、双極性障害、統合失調症の両親を持つ子供では、精神刺激薬の使用群(メチルフェニデートが83%)では62.5%が精神病症状を呈し、服用していない群では27.4%であった。

ADHDの治療薬の使用と骨密度の低下が報告されており、この懸念から実施された動物研究ではメチルフェニデートが悪影響を与えることが観察された。成長抑制以外に長期的な害がよく知られていないため、2017年に動物試験におけるシステマティックレビューを実施したところ、α2受容体作動薬のクロニジンと、メチルフェニデートで生殖機能を損なっている形跡が見られた。

精神医療における大麻の有効性が広く認知されるようになった最近では、医療大麻のADHDに対する有効性について現在多数の研究が行われている。規制の緩和された米国やカナダ、英国等で精神科医が医療大麻や大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)系製剤を患者に処方する場合が増えており、中枢神経興奮薬に比べ副作用や依存の少ない有力な代替薬として使用されている。

北米で小児の薬物有害反応の報告が最も多かったのは、ADHDの治療薬と、にきび治療薬のイソトレチノインであり、北米でのADHD治療薬の使用量に関係している可能性がある。

ADHDについて光トポグラフィーで薬物治療の効果を確認できることが示された。(途上の技術である、光トポグラフィーを参照。)

医薬品
医薬品では、覚醒水準を引き上げる薬が用いられる。

日本でADHDに適応がある薬は、2007年よりメチルフェニデート徐放剤(コンサータ)、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(英語版)(インチュニブ)の3種類。短時間作用型のメチルフェニデート(リタリン)は、日本で過去に乱用の問題がありADHDへの適応はない。

アメリカではアンフェタミン(アデロール、日本法における覚醒剤)、デキストロアンフェタミン(アンフェタミンのD体)、リスデキサンフェタミン(体内でデキストロアンフェタミンになる)も用いられる。ダソトラリン(英語版)の臨床試験が進行しており、これはセルトラリンの活性代謝物である。

メチルフェニデート
かつて日本でメチルフェニデート(商品名リタリン)が使用されていたが、ADHDへの使用は認可されていなかったため、二次障害のうつ病に対して処方するという形をとっていた。しかし、2007年10月乱用のため、リタリンの適応症からうつ病が削除された。代わってメチルフェニデートの徐放剤(商品名コンサータ)が小児期におけるADHDの適応薬として認可され、2013年に成人へと適応が拡大された。

メチルフェニデートは長期摂取による依存性や何らかの副作用が懸念されるが、適正に使用されている限り薬物耐性はつきにくい。特に思春期以前の児童に関しての投薬も依存の危険はないとされるが、米国ではあまりに安易に幼年児にも処方するため、2-3歳児への処方では実際にはADHDではないケースがかなり含まれているのではとの懸念がなされている。メチルフェニデートは前頭前野皮質のノルアドレナリン・トランスポーター (NAT) に作用し細胞外ドーパミンの濃度が上昇、治療効果をもたらすという仮説がある。リタリンは、脳内のドーパミン・トランスポーターとノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事で、ドーパミンやノルアドレナリン量を増やす。セロトニン・トランスポーターにはほとんど作用しない。コンサータ錠は12時間程度効果が持続する、すぐに効き目が現れるので数日で効果がみられるといった特徴があるが、コンサータ錠適正流通管理委員会に登録がある医師しか処方が認められていない。

アトモキセチン
アトモキセチン(商品名ストラテラ)は、ノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用を有する。2009年4月に認可された。本剤も小児に限定されていたが、2012年に成人へと適応が拡大された。ノルアドレナリン・トランスポーターに作用する事により、間接的にドーパミンにも作用するとされる非中枢刺激剤である。メチルフェニデートと異なり乱用の可能性がない。

グアンファシン
グアンファシン(英語版)徐放剤(商品名インチュニブ)が、2017年3月に子供に対して認可された。非中枢神経刺激薬で、α-2アドレナリン作動薬に分類され、機序はまだ未解明だが、患者の低下している前頭前皮質の後シナプス性アドレナリンα2受容体に作用し、多動性・衝動性を改善するとしている。延髄ではアドレナリン2A受容体の刺激によって、交感神経を抑制し血圧が下がることが知られており、この作用を持つグアンファシンやクロニジンは高血圧治療薬であったが、以前よりADHD治療にも使われることがあった。

ほか DNRIのADHD治療薬を大日本住友製薬の米子会社であるサノビオン・ファーマシューティカルズ・インクが米国で治験中である。DNRIは同じくノルアドレナリンとドパミンに作用する中枢神経興奮薬よりも緩やかに作用し、依存性も少ないという特徴がある。

漢方薬
ADHDなど、発達障害には抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、甘麦大棗湯、黄連解毒湯、香蘇散、柴胡加竜骨牡蛎湯、当帰芍薬散などをその人の証にあわせて使い分ける。また、西洋薬の補助として併用することもある。抑肝散、抑肝散加陳皮半夏に関しては、ADHDに効果があることが日本東洋医学会でも示されている。Shanghai Journal of Acupunctureにおける研究によれば、子供592名を、鍼灸グループと漢方薬グループ、比較グループに分け、鍼灸で84.45%の効果率、漢方薬で78.77%の効果率となりどちらも、症状と脳波に改善が見られ、また患者の年齢が低いほど良好な結果が得られた。」とのことである。

鍼治療
ADHDには、鍼治療が有効という意見があり[99]、日本でもADHDに鍼治療を行う鍼灸治療院が存在する。また、日本小児はり学会でも発達障害をテーマとされたこともあり、「ADHDと疳の虫は同疾患である」という意見も存在する。ニューイングランド鍼灸大学院大学助教授、桑原浩榮によれば、軽度の疳虫症は肺虚肝実証、重度のADHDは七十五難型肝実証、薬剤過剰投与で脾虚肝実証となることが多いという。また、治療回数は一般的な疳虫症で4日から5日連続、軽症で2日から4日連続、重症だがADHD薬を服用していなければ7日から10日の連続、毎日の服用が10mg以下のADHDは週一回で1年から3年、毎日の服用が20mg以上のADHDになると週2日から3日で2年から4年ほどである。米国において、ADHDへの鍼治療は認知度が高まりつつある。一方、中国四川大学の調査ではADHDへの効果は不明とされている。

研究事例
経頭蓋磁気刺激法 (TMS) - 経頭蓋磁気刺激法をADHDに使用した結果、数値は小さいが注意力に改善が見られた。
中医学による、中薬と鍼治療。河南中医学院では、ADHDを弁証論治別に分別し、中薬で出すべき生薬や鍼治療における経穴を示している。

ワーキングメモリの訓練 21世紀となりワーキングメモリにおける障害は、ADHDの主要な障害または中間表現型であることが明らかにされた。神経生理学的にはADHDは脳の前頭葉とドーパミン・システムの機能変化と関係がありえる。(Castellanos and Tannock, 2002; Martinussen et al., 2005)

スウェーデン、カロリンスカ医科大学のクリングバーグらは、コンピュータによる訓練方法を開発し、2つの研究 (Klingberg et al. 2002, Klingberg et al., 2005) においてワーキングメモリーが訓練により改善可能であり、ADHDの症状を、精神刺激薬に匹敵する効果量にて軽減することを明らかにした。当時の同大学学長であり、世界的なエイズ研究者であるハンス・ウィグゼルは、医学を専門とする同大学ベンチャー・ファンドとしては初めて新薬以外の分野として事業化を支援し、2009年現在スウェーデンでは約1000校の小学校(約15%)において、米国では約100クリニックにて、それぞれ年間3000人以上の児童・成人のADHD改善トレーニングが行われている。

日本では、2007年夏より約半年間のえじそんくらぶによるワーキングメモリートレーニング評価プロジェクトとして開始された。2008年日本発達障害ネットワーク年次大会にブース出展があり、関係方面への紹介がされた。日本では2009年、コグメド・ジャパンがワーキングメモリトレーニングを提供している。

英ヨーク大学のギャザコール、英ノーザンブリア大学のホームズらは、コグメドのワーキングメモリ訓練を使い、訓練プログラムと、精神刺激薬による薬物療法の2種の介入にて、ADHDをもつ児童のワーキングメモリ機能への影響を評価した。薬物療法が視空間のワーキングメモリだけ改善した一方で、訓練はすべてのワーキングメモリ要素(言語も加えたワーキングメモリと短期記憶)で大幅な改善をもたらし効果は6ヶ月後も持続した。IQ成績はいずれの介入でも変化しなかった。議論のなかで、「断然に最もドラマティックなワーキングメモリの改善はワーキングメモリトレーニングで観察された。測定されたワーキングメモリのすべての構成要素で有意で大幅な改善が見られ、それぞれにおいて、グループの児童を同年代の平均以下のレベルから平均以内のレベルにもっていった」と報告し、トレーニングによる視空間・言語すべての要素のワーキングメモリへの全体的な改善が、教室の言語中心の環境における多くの学習活動でワーキングメモリへの重い負荷にしばしば耐えられない児童にとって重要で実用的な利益となろう、としている (Joni Holmes, Susan E. Gathercole 2009)。

食事療法
ランダム化比較試験で、ビタミンミネラルは、感情調節、攻撃性、不注意を改善したが、過活動と衝動性には変化がなかった。

フィンランドの調査で、腸内フローラがADHDを予防する効果がある可能性が示唆されている。

少数意見
町沢静夫はADHDの特徴は攻撃性であると述べている。それによると注意欠陥・多動性障害の症状は攻撃性と非行であり、いろいろな小さな悪事を重ね、慢性化すると行為障害となり、18歳以上になると反社会性パーソナリティ障害になることが多いという。 しかし、町沢がADHDと診断した患者のうち、メチルフェニデートの効果があったのは5%[121]である。これは他の研究によって一般に60〜80%とされる結果とかけ離れており、町沢の診断したADHDは、典型的なADHDではない可能性がある。これについて、町沢は米国人と日本人の特性の違いから薬物の効き方に差があると説明している。

経過
367例の小児ADHDでは、29.3%が成人期まで症状が継続した。

疫学
ADHDの子供の大部分は正常な知能である。

有病率
有病率は、DSM-5(2013)ではほとんどの文化圏で子供の約5%、成人の約2.5%、男:女比では子供で2:1、成人で1.6:1という記載がある。WHOの調査では、成人では世界全体で3.4%(国によって1.2〜7.3%と大きく異なる)。主症状のうち、多動は9〜11歳、衝動性は12〜14歳で診断的寛解となることが多く、不注意は成人後も継続する事が多いという報告がある。

米国CDCの統計では、4-17歳児童の約11%(640万人)がADHDと診断されており(2011年)、男児が13.2%、女児が5.6%と男児に多い。ニューヨーク・タイムズは、古典的なADHDの有病率は児童の5%であるが、しかし今の米国ではADHDは喘息について二番目に多い小児疾患であり、それには過剰診断や製薬会社による病気喧伝があると述べている。英国の統計では、狭義のICD-10によるhyperkinetic については児童青年の1-2%ほどであり、広義のDSM-IVによるADHDについては児童青年の3-9%ほどであった。一方フランスでは症状を呈す心理社会的原因の解消を試みており真にADHDと診断される子供は0.5%である。

日本の有病率は、成人では浜松市の大規模調査より1.65%と推定されている。

双生児での研究
コロラド大学のジャクリン・J・ジリスらの研究では、ADHDを発症した一卵性双生児が二人とも発症するリスクは、ADHDを発症した一卵性ではない兄弟姉妹の場合の11倍 - 18倍になると報告された。ノルウェーのオスロ大学のグヨーネとサンデット、英国のサウサンプトン大学のジム・スティーブンソンらの研究では、526組の一卵性双生児と389組の二卵性双生児を調べた結果として、最大で80%までADHDを遺伝的要因で説明できると発表した。

生活への影響
CDCによると、ADHD児を持つ親は、一般児と比べて親子関係がトラブルとなる確率が約3倍であるとされる(21.1%と7.3%)。またADHD児はケガをする確率が高い(4.5%と2.5%)。

学習面においては、計算などの単純作業において障害が原因で健常児と比較してミスが多くなる傾向はあるが、周囲の人間の適切なフォローや本人の意識によってミスを減らすことは可能であるとされている。ADHDだからという理由でレッテルを貼ったり、甘く評価するなどは不適切な対応であるという意見もある。かといって、現在では一般教諭がADHD児に対して常に適切な対応を取ることは容易だというわけではない。

学習機能面以外の問題として、ADHD児は授業中に立ち歩く、他の生徒とずっとおしゃべりをし続けるなど、教諭や他の生徒にとって迷惑な存在になるケースも多い。またノートを取る、宿題をする、提出物を出すなどADHDの児童が苦手とする傾向がある(あるいは好きな教科しかしない)。

そもそも、教育現場でADHDが注目されるのは、学級崩壊の原因になるような問題児が発生することへの説明としてADHDが槍玉にあがったことという構造がある。

2014年には京都市立小学校で、ADHDの傾向がある男子児童に対し、女性教諭が粘着テープを示して口に貼り付けていたことが判明し、児童の保護者が「ADHD児に対する差別的な取り扱いだ」と抗議する事態となった。これについては、有識者からは「教諭一人の問題でなく、学校が児童一人一人の教育機会を十分に保障していないためだ」という意見がある。

日本の現状
診断・治療環境
ADHDという分類が妥当であるのかということはADHDの概念を確立したアメリカでも論争が続いている状況である。日本においては、ADHDの特徴については未だ明確に定義化されていない。またADHDの25%に反社会的な行動が見られるとされ、成人しても集中力の困難や反社会性パーソナリティ障害の併発などを起こすことがある。近年は一般向け書籍の増大やテレビ番組における報道による認知度の上昇の影響で、「自分がADHDではないか」と受診してくる患者が増えた。

2013年に日本精神神経学会学術総会が静岡県の浜松市で行った調査によれば、調査対象10000人のうち196人がスクリーニング[要曖昧さ回避]の結果ADHDの「疑いがある」と認定をされた。

文部科学省は、ADHDの特徴として、「年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、衝動性、多動性」と定義づけている。文部科学省は、平成15年3月に行われた、「特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議」において、判断基準や指導方法について提示した。また、同年より、高機能自閉症や学習障害も含めて、支援を目的とした、「特別支援教育推進体制モデル事業」を開始した。

公的支援
公的支援は立ち遅れがちだったが、2005年に発達障害者支援法が成立した。これにより特別支援教育等の支援策が広まりつつある。栃木県では「とちぎ障害者プラン21」を策定、埼玉県では「彩の国障害者プラン21」を計画、千葉県では県議会が平成13年に「日本版ADA(障害者権利法)の制定を求める意見書」を可決した。 各都道府県の発達障害者支援センターは、無料で相談・職業訓練・デイケアー・病院等の紹介等各施設独自のサービスを提供している。 ただし、東京都など一部の自治体では、相談窓口の電話がつながりにくい状況が続いている。

また、2010年より、ICD-10 において F80 から F89,F90 から F98 に 当たる発達障害が精神障害の一部として制度上併記され、市町村の保健所などで、専門医による診断書を提出の上で、症状や他の発達障害・疾患との合併など総合的な状態を熟慮し精神保健福祉手帳が交付される場合がある。 また、保健所で所定の書式による診断書の提出で、障害者サービス受給者証、もしくは自立支援医療受給者証の交付も行われており、これにより一般的な障害者福祉サービス(家事援助、行動援護など)を受けることが出来る。障害者福祉サービスには就労移行支援の利用も含まれ、就労移行支援訓練所 を利用することにより原則2年間まで職業訓練を受けることができる。 利用に当たっては、障害者サービス受給者証、自立支援医療受給者証、精神保健福祉手帳のいずれかが必要である。

また、金銭面の管理が極めて難しく、社会生活に支障をきたしている場合、 判断能力が十分でない人が地域で自立した生活を送るための日常生活自立支援事業における、各地の社会福祉協議会が行う援助事業サービスに「権利擁護」があり、利用者はそれぞれ、以下の必要な援助を受けるための契約を協議会と結ぶ。

福祉サービスの利用援助
苦情解決制度の利用援助
住宅改造、住居の貸借、日常生活上の消費契約や住民票の届出ほか行政手続に関する援助など 日常的なお金の管理(預金の払い戻し・解約・預け入れなど)金銭管理などの権利擁護の制度を使用するケースもある。 これらの福祉サービスは、他の発達障害においても診断の上で関係機関に申請し、認定されれば利用できるのは同様である。 保健所や自治体の役所の窓口等で、これらの利用出来る福祉サービスをまとめた冊子を入手する事が出来る。

支援体制
日本では発達障害者支援法が制定され、以前より支援体制は整ったものの、発達障害を専門とする医師・医療機関が相変わらず少なく、専門医師・機関を見つけて診断や治療までに至るにはまだまだ苦労することが多い。それでも、最近は支援団体や自助団体が各地で設立され、インターネットの普及もあいまって、情報は入手しやすくなりつつある。

なお、このような検索サイトや医院紹介機関に登録されていなくとも、ADHDを診断できる医師・医療機関は存在する。特に成人ADHDに関しては、Webページなど表向きには小児向けにADHDを診断可としている医師・医療機関でも、実際には成人も診断している場合がある。

病名・概念の変遷
多動で落ち着きのない子どもは古くから知られており、ADHDの疾患概念は最近になって現れたものではない。後に小児神経医学などの分野で注意が払われるようになる。

1775年、ドイツの医師、メルヒオール・ヴァイカルドは医学教科書にADHD的な行動を記載し、現在のADHDの「不注意」側面との一致から、おそらく医学文献上のADHD初出とされる。

1902年、小児科医スティルが、王立内科医協会の講演で、「道徳的統制の欠損」という概念を用いながら、攻撃的・反抗的になりやすく、注意機能に異常がある43児童の症例を分析し、講義録がランセット誌に掲載される。これらの中には現在のADHD「混合型」に合致する例が見られるという。1908年、トレッドゴールドが、早期に発生した未検出の軽度脳損傷「脳微細損傷(MBD,minimal brain damage)」という原因仮説を発表する。加えて北米でエコノモ脳炎(1917-18年)の流行があり、その後遺症(脳炎後行動障害)との類似性が、なんらかの脳損傷を背景に持つ病態という推測を生む。

この流れから「脳損傷児(brain-injured child)」(1947年)の概念が提唱されたが、50−60年代は、確たる損傷の痕跡が見つからないため、ADHDを表す概念として「脳微細損傷(MBD,minimal brain damage)」から、やや表現を抑えた「脳微細機能障害(MBD,minimal brain dysfunction)」が提唱された。70年代には、MBD概念も原因となる脳機能障害が特定できず、疑問が持たれ次第に使われなくなる。

行動異常児の脳の形態的異常を見つけようとする中で、1937年にチャールズ・ブラッドリー(英語版)は薬物療法を発見した。彼は腰椎から脳脊髄液を抜いて気体を入れ脳を撮影する手法(気脳造影)をもちいたが、子供には大変な頭痛が残った。緩和のため中枢神経刺激薬(アンフェタミン)を試みたところ、頭痛には無効だったが異常行動や学力の劇的な改善に驚く。研究を進め、治療法としての中枢刺激薬を発見し、薬の性質とは逆に落ち着きが出る子供がいることの理由を考察した。また彼ら中枢刺激剤が有効な子供群の特徴[注 8]を指摘した。それはほぼ今日のADHDの病態であった。

先駆的な薬物療法の研究であったが、精神分析の影響が広まり心理療法が重視されたことなどから、顧みられなかった。ようやく1950年代になって、障害の生物学的な特定はまだ出来なかったが、発症メカニズムの理解や創薬のために応用されはじめる。これとは別に1954年にアンフェタミンに似た中枢刺激剤、メチルフェニデート(リタリン)が発売され、当初はうつやナルコレプシーの症状に用いられたが、最も驚異的な効果を示したのはADHDの症状であり、かつ副作用はより少なかったため使われるようになった。現在のADHDの治療は主にこのような流れをもつ中枢神経刺激薬による薬物療法に依っており、メチルフェニデートは最も頻繁に処方されている。

脳損傷を原因とするMBDの流れとは別に、50−60年代、原因を問わず主症状がある障害と捉えて「多動児、過活動児」、「多動(衝動性)障害」という概念が提案された(操作的診断の先駆け)。 DSM-II(1968年)で、診断概念として「多動性」が初めて現れ「子供の過活動性反応」が記載される。この延長上でWHOもICD-9(1977年)で「多動症候群(過活動症候群)」が記載された。

1971年、ウェンダーは、MBDの症状に「短く乏しい注意集中」という、後に「注意欠如」と呼ばれる障害の特徴を見出した。 DSM-III(1980年)は、ウェンダーらの成果を取り入れ、「注意欠陥障害(多動有り・無しの)」(Attention Deficit Disorder with and without Hyperactivity)と記載し、あくまで不注意を中心症状と見ていた。

DSM-III-R(1987年)では「多動を伴う」障害に限定し「注意欠陥多動性障害」に変更しやや重点を「多動」に戻す。

DSM-IV(1994年)は、不注意、衝動性、多動性が必ずしも揃わない障害を再び認めて、下位分類で優勢、混合を診断するように変更した。成人や特に不注意面が見過ごされがちな女児などの障害理解を反映し、再び「多動」偏重を抑えた。

成人・女性のADHDを扱った洋書の翻訳で、端的な病態を邦題に使った『片づけられない女たち』(2003年)が発売されると、これを契機に成人ADHDを疑う本人が専門医療機関に押し寄せ、日本における第1次大人のADHDブームのような状況がおこった。この邦題は強い印象を与え、片付けられるならADHDではない、ゴミ屋敷即ADHDなどの誤解が続いている。

日本の発達障害者支援法(2005年)で、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義し、ADHDを代表的な発達障害のひとつに挙げた。世界では、この時期「発達障害」についての正式な医学的な定義は定まっておらず、ADHDは、行動と衝動性の(DSM)あるいは情緒と行動の(ICD)の障害とされていた。一方、日本では、特に福祉領域ではDSM-5の分類を先取りするように、ADHDも発達障害として認知されており、法律にも反映された。

DSM-5(2013年)では用語や診断基準の骨格はDSM-IVをほぼ踏襲している。近年の脳機能研究の知見を踏まえ、DSM−III以来一貫しつづけた反抗性挑戦性障害、素行障害のグループという分類から、初めて神経発達障害のグループに位置づけられた。

2013年ごろより来院者が増え日本では第2次大人のADHDブームの状況となった。以前と違いは、コミュニケーションの不調の面から、集団の中であぶりだされ診察を求める人や企業が不調に気が付き受診を勧められる人が多いことである。

その他
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この節には独自研究が含まれているおそれがあります。問題箇所を検証し出典を追加して、記事の改善にご協力ください。議論はノートを参照してください。(2014年9月) ADHDを障害としてではなく、生物の進化の過程で発現した個性であると捉える枠組みもある。薬物による治療が社会適合性を改善する反面、個性をつぶすことにつながるのではとの懸念もあがっている。ADHDだけに限らず、精神的・身体的に他の人とは異なった人たちも、プライドもあれば夢もある個人として扱われるべきであり、障害も含めた個性としての認識をするというアプローチもありうる。

アメリカの医学博士のダニエル・エイメンによれば、ADHDは日本では脳神経内科、脳神経外科において認知症に利用される脳SPECTにより、6タイプ分類でき、それぞれのタイプによる治療法、投薬すべき薬、症状の緩和に効果があるサプリメントが異なると主張している。(なお、その主張には批判も寄せられている)

公表している著名人
マイケル・フェルプス - 9歳のときにADHDと診断された
小島慶子 - 40歳を過ぎてから軽度のADHDと診断された

以下略

参照元 : wiki/注意欠陥・多動性障害

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