2017年6月13日火曜日

薬の辞め時も、辞め方もさじ加減が大事 高血圧を下げる薬も危険!

医者のクスリ、本当のやめどきは?高血圧薬も要注意!

2017/6/12(月) 6:00配信



薬の本当のやめどきはいつなのか。老年医学の第一人者である東京大学大学院の秋下雅弘教授は「年を取ったら若いころと同じつもりで薬をもらう姿勢は改めた方がいい」と促す。

若者や壮年と同じ量の薬を出されていたり、自分で購入した市販薬で「大人」の量を飲んでしまうかもしれないが、若い人と同じように薬を飲んでいると、予想外の副作用や中毒症状が出ることがあるからだ。

秋下教授に引き続き解説してもらおう。薬の量の次に問題になってくるのが種類だ。飲む種類が多い分だけ、副作用のリスクは増える。にもかかわらず、7種類以上の薬を薬局で受け取る割合は40~60歳で10%、65~74歳で15%、75歳以上で26%と上がっている(厚生労働省「2014年社会医療診療行為別調査」)。

高齢者では処方される薬が6種類以上になると、副作用の頻度が15%くらいに跳ね上がる(Kojima T. Akishita M, et al. Geriatr Gerontol Int. 2012)。薬を飲まないのが一番いいが、かといって病気を放置するわけにはいかない。

●クスリは5種類まで 副作用で転倒や認知症まがいの症状

では、何種類くらいが適当か。日本老年医学会で検討した結果、5種類までを目安にするという方向で意見がまとまった。

複数の薬を飲む一番の問題は、薬同士の相互作用が起きることだ。3種類以上を一緒に飲んだら何が起きるかについては誰も調べていないが、実際に相互作用は起きている。

薬で現れた副作用を病気だと勘違いし、次々と薬を追加されたために、新たな副作用が生まれ、最後は重篤な状態に陥ってしまう例もある。老人だから「転倒」したり、「認知症」になるのではなく、副作用によって「ふらつき」「筋力低下」が出て「転倒」する、認知症まがいの症状が出ることもあるのだ。

具体的に薬との付き合い方はどう変わっていくのか。血圧の薬で見てみよう。

一般に高血圧と診断される基準は、年齢にかかわらず上の血圧(収縮時血圧)が140、下の血圧(拡張時血圧)が90。ただ、加齢とともに生理的に血圧は上がっていき、高齢者は血圧がすごく低い人の方がその後の寿命が短い傾向がある。そのため年齢によって血圧の管理基準はやや異なる。

75歳以上の高齢者の管理基準は、上150未満、下90未満と少し緩く、この範囲なら降圧剤を4種類も5種類も飲んで無理に下げるのはやめた方がいい。高血圧薬の一種、ループ利尿薬、α遮断薬、β遮断薬は副作用を起こしやすいので、高齢になったらできれば使用を控えたい。

もっとも、血圧を下げる薬を飲むのか飲まないのか、飲むとしたら血圧をどこまで下げたらいいのかは、個々の老化度や体の状態によって異なる。これまで心疾患を起こしたことがある人や糖尿病患者は上130、下80、脳血管障害を起こしたことがある人は上140、下90と、高齢者であっても少し厳しめの基準がある。

脳卒中や動脈硬化を予防するために飲むコレステロールを下げる薬は、高齢になったら使わなくてよい場合が多い。75歳以上の人がコレステロールの薬を飲んだからといって脳梗塞が減ったというデータは、どこにもないのだ。

糖尿病についても、高齢者に血糖を下げる薬でどこまで血糖値を下げる治療をした方がいいのか、本当のところはよく分かっていない。むしろ血糖を下げ過ぎない方が長生きするという指摘もある。

ただし、決して独断で薬をやめないこと。薬をどうするかはその人の老化の具合や病気の種類、置かれた状況などで違う。100人いれば100通りの薬の飲み方がある。薬のやめどきも、やめ方もさじ加減が大事なのである。ポイントは薬に依存しないことだ。

(週刊ダイヤモンド編集部)

参照元 : ダイヤモンドオンライン




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