2016年1月18日月曜日

大動脈瘤破裂を未然に防ぐ方法 「背中の痛みが動脈に関係する重大病のサインの一つ」

背中の痛みは危険信号 大動脈瘤破裂を未然に防ぐ方法(1)

2015年12月26日 10時00分



11月中旬、俳優の阿藤快さん(享年69歳)の突然の訃報に驚かれた人は多かったに違いない。死因は大動脈瘤破裂胸腔内出血だった。

大動脈瘤破裂は、心臓から全身に血液を送り出す動脈にできた瘤が破れる病だ。瘤の直径が5センチを超えると破裂する可能性が高くなり、出血によって、そのままショック死することがほとんどだという。

阿藤さんは、破裂によって胸腔内に血液が流れ込み、そのまま帰らぬ人となってしまったが、直前までドラマに出演するなど元気な姿を見せていたというから、まさに“突然死”だった。

「大動脈の瘤は、動脈が風船のように膨らんで瘤状になったもの。その主な原因となる高血圧や動脈硬化の治療をしても徐々に大きくなってきます。破裂のリスクが高まると、原則、外科手術が必要。そのタイミングは一般的には超音波検査やCT検査によって判明する瘤の大きさで決まります」(健康ライター)

阿藤さんの場合は生前、「背中が痛い」と周囲に漏らし、マッサージを受けていたという。ある専門家は、その背中の痛みが動脈に関係する重大病の“サイン”の一つだと指摘する。

東京医療総合センターの循環器科担当医がこう説明する。

「動脈の血管の直径が正常の1.5倍、40ミリ超に膨らんで瘤になったものを、大動脈瘤と呼びます。その多くの場合、瘤だけであれば痛みなどの自覚症状はほとんどありません。瘤が大きくなり血管の壁が裂け、血液が血管の中膜内に入り込む解離が起こったときや、破裂した際に、初めて背中や胸に激痛が走るのです。阿藤さんの場合、まず小さな解離が起こって痛みが一時的に出た後、再度の解離から破裂に至ったとも考えられます」

つまり、解離した部分に血栓ができて、いったん痛みが治まり、ジワジワした痛みを繰り返して破裂に至ったと考えられる。

「破裂時には、9割以上の人に強烈な痛みが見られます。突然の最初の痛みが最も激しいのが、急性心筋梗塞などと異なる点で、引き裂かれる感じや、焼けつく感覚もあり、それが長時間続く。心臓に向かって解離が進んだ場合は、心筋梗塞を起こしたり、大動脈弁が拡張して大動脈弁閉鎖不全症などに陥る可能性もあります」(前出・健康ライター)

解離が始まった場所が心臓から出てすぐの最も太い上行大動脈にある場合は、著しい持続生胸痛があるという。

「この痛みは、しばしば喉元から背部痛にまで広がり、腰の方まで進行する場合があります。しかし、背中や胸、臓器の激痛は、いずれも脊髄を通って脳に伝えられる。このとき、痛みが起こっている箇所を脳が取り違えると、一見、関係のない場所に痛みを感じさせるので注意が必要です。これは心筋梗塞で肩や顎が痛むのと同じケースで、『放散痛』、『関連痛』とも言われます」(専門医)

参照元 : 週刊実話


背中の痛みは危険信号 大動脈瘤破裂を未然に防ぐ方法(2)

2015年12月27日 10時00分



普段の生活で起きる背中の痛みは、筋肉や関節、神経系のトラブルによるものが多い。しかし、60歳を超えて背中に痛みがあったときは、大動脈瘤破裂の可能性も頭に入れておいた方がいい。

都内総合医療クリニック院長で医学博士の久富茂樹氏はこう語る。

「とりわけ、高齢者で高血圧、糖尿病、高コレステロール、さらに喫煙歴があったり、家族に心血管病で突然死した人がいれば、循環器内科などで検査を受ける必要があります。大動脈瘤は、加齢や生活習慣など動脈硬化の進行によって生じます」

しかし、健康診断で“異常なし”と診断された人が1カ月後に大動脈瘤破裂で亡くなるケースもあることから、久富氏は「検査をするにも注意が必要」と、次のように指摘する。

「一般的な健康診断などで行われるような一方向からのレントゲン検査では、大動脈瘤は見逃されてしまうことが少なくない。リスク因子がある人は、胸のレントゲン撮影では正面と側面の2方向にしてもらい、一度は心臓超音波、CT、MRI検査などを受けるべきです」

治療法としては最近、「ステントグラフト」による治療も行われるようになった。人工血管(グラフト)にステントと言われる針金状の金属を編んだ金網を取り付けたものを圧縮し、カテーテルの中に収納したまま使用する。

「治療にあたっては、腎動脈から大動脈瘤まで1センチ以上の距離があるなどの条件が必要ですが、最近はより難しいものでも可能になっています。しかも、患部を大きく切開することなく治療ができるため、高齢者やリスクの高い人でも安全とされています」(前出・健康ライター)

先ごろ、東京大学宇宙線研究所の梶田隆章所長が受賞したノーベル物理学賞。遡ること100年前、同賞を受賞したアルベルト・アインシュタインも、腹部大動脈瘤破裂によって倒れ、76歳で帰らぬ人となった。

アインシュタインといえば、『相対性理論』を独学で学び、量子力学、光電効果などさまざまな研究を通して世界観や宇宙観を変えたと言われる人物。その目覚ましい功績とは裏腹に、私生活では雑巾で顔をふくなど破天荒な一面があったと言われる。

69歳のころ、手術によって腹部に大動脈瘤があることが分かったが、医療技術の未熟さで適切な治療は受けられなかった。その後、疲労やストレスの蓄積などによって大動脈瘤が破裂し、息を引き取ったのだ。亡くなる瞬間も、枕元には計算式が並ぶ1枚の紙が置いてあったという。

アインシュタインの例を見るまでもなく、大動脈瘤破裂は大出血を起こすまでに目立った自覚症状がない。一度破裂すれば、約半分の患者しか病院にたどり着けないとされる病。運良く緊急手術を受けられても成功率は5割程度だ。

そのため、瘤が破裂する前に治療することが原則となる。

参照元 : 週刊実話


腹部大動脈瘤になりやすい人

大動脈瘤の発生には、動脈硬化が強く関係していると考えられていますが、それだけではありません。さまざまな報告によると、男性は女性の5倍の有病率があり、特に60歳以上になると増加することがわかっています。また、喫煙習慣や高血圧、家族歴がある人も腹部大動脈瘤になる可能性が高いといわれています。



腹部大動脈瘤のリスク因子

□ 高血圧
□ 60歳以上
□ 男性
□ 家族歴
□ アテローム性動脈硬化症の既往歴
□ 喫煙者又は喫煙歴

参照元 : Medtronic



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