2017年7月1日土曜日

毎食後の「歯みがき」は、歯と歯ぐきにダメージを与え、歯の喪失だけではなく、全身疾患のリスクを高める

「歯はみがいてはいけない」は本当か? 著者に聞いてみた

2017/6/29(木) 12:11配信



『やっぱり歯はみがいてはいけない 実践編』(講談社+α新書)森昭さん、森光恵さん

お口のケアへの関心が高まっている中で、刺激的なタイトルをつけたものだが、そのかいもあってか前作の「歯はみがいてはいけない」は昨年の出版以来、増刷を重ねる反響を呼んでいる。著者の森昭さんは京都府舞鶴市の歯科クリニックの院長。「歯磨きは、歯ブラシに歯磨き剤をつけてゴシゴシやるのが一般的ですよね。それが歯磨きだと考えるのは間違いです」という思いが、タイトルにこもっている。今作は前作で紹介した考え方のハウツーをまとめたものだ。

歯磨きは何のためにするのか。「食べカスを取るため」と答えたら、それは「×」。森さんによると、口の中の細菌の塊であるプラーク=歯垢(しこう)=を除去するためというのが正解だ。もちろん、細菌の栄養になる食べカスを取ることにも意味はあるが、最も大切な目的が細菌の除去なら、歯磨きよりも大切なことがある。

それはフロスと歯間ブラシで歯と歯の間や歯周ポケットを掃除すること。歯ブラシで歯をゴシゴシやるだけでは、この部分の3割程度しかきれいにならないと言われている。「予防歯科について勉強すれば、お口のケアの目的は細菌を減らすことなのは明らかです。なぜ、日本では歯磨きばかりが強調されてしまったのか。先進国を見ると、日本の口腔(こうくう)ケアはガラパゴスですよ」と嘆く。

お口のケアに歯磨き剤が不要な理由

そしてもう一つ、森さんが強調しているのが唾液の働きだ。「食事をすると、歯の表面のエナメル質が酸で溶けやすくなります。それを30分から1時間ぐらいかけて中和し、再石灰化と言って歯を強くしてくれるのが唾液です」と言う。そのほかにも食べカスを洗い流し、細菌の働きを抑え、口の中を保護するといった多様な機能がある。「食後は口の中で舌を回して唾液で口の中をきれいにしましょう。食後すぐに歯をみがいてしまっては、作用が強い食後の唾液を捨ててしまいます。唾液は天然の歯磨き剤です」と強調する。だから、お口のケアに基本的には歯磨き剤は不要という考えだ。

では、どういう時に歯磨き剤を使うのか。森さんの診療では必ず、顕微鏡で口の中の細菌の種類を確かめる。虫歯菌、歯周病菌、カンジタ菌など菌の種類は人によって違う。その人の口の菌の抑制に適した薬理作用のあるプロ用の歯磨き剤を処方するのだという。「市販の歯磨き剤を使うとさわやかだとは思いますが、プラークにさわやかさは不要です。それはエチケットの問題です」と言う。

プラーク除去の観点では、歯磨きのタイミングも通念とはちょっと違う。通常の歯磨き指導は毎食後とされることが多い。森さんは、起床後と就寝前が大事だという。夜寝ている間は唾液の分泌が低下し、細菌がたまりやすくなる。だから、寝る前に歯磨きをして細菌の量を減らし、起床後は増殖した細菌を洗い流すということだ。日中は、唾液の力でプラークが作られるのを比較的予防できるので、夜間のケアを重視しなければならない。

「歯を磨くな」とは書いていない?

前作の「歯はみがいてはいけない」(森昭著)を読んだ読者からは、「どんなフロスや歯間ブラシを、どういうふうに使えばいいのか」といった問い合わせがたくさん届いた。そこで今年6月に出版したのが、「やっぱり歯はみがいてはいけない 実践編」だ。

こちらは、クリニックに併設する歯科グッズの店を運営する歯科衛生士で妻の光恵さんとの共著になる。フロスや歯間ブラシ、歯ブラシの種類、使い方、歯茎からの出血など症状別のケアを具体的に紹介している。クリニックに歯ブラシや洗口液などの歯科グッズを置いているところはあるが、店舗まで併設して品数をそろえているのは珍しい。

光恵さんは「歯ブラシは30種類以上、フロスも8種類置いていますが、患者さんごとに適したものがあります。診療中だと、患者さんにフロスの使い方や選び方などをゆっくりと指導している時間がないので、店に歯科衛生士を常駐させて、その人に合った歯ブラシなどを紹介して、フロスは体験してもらっています」と言う。

本を出版した後で読者からは、「本の中では、歯を磨くなとは書いていないじゃないか」という声も寄せられた。その通り。わざわざ歯磨きやフロスの指導ができるように店を開いているくらい、歯磨きも含めて適切なお口のケアには力を入れている。

歯磨きに偏ったケアに注意を喚起したかったということだ。本が反響を呼んだことから、遠方から4時間もかけて受診に来る患者まで出てきた。「遠くから来ていただいても、私は名医でも何でもない普通の歯科医。できるのは歯磨きやフロスの指導ですから、なんだか申しわけなくて」と森さんは戸惑っていた。

フロスや歯間ブラシでのケアの重要性や唾液の機能については議論の余地はなさそうだが、歯磨きのタイミングなどについては異論を持つ歯科医もいるだろう。“森流”をひとつの提案と受け止めて、専門家の間で議論を深めて情報発信をしていただきたい。

参照元 : ヨミドクター


「歯を磨いてはいけない」は本当なのか 歯科医が回答

2016.09.29 16:00



「1日3回、必ず食後の歯みがきをしましょう」。小学校でそう習い、今も1日3回の歯みがきを欠かさない人は多いはずだ。そんな「常識」に異を唱えたのが、『週刊現代』に掲載された「気をつけろ! 60すぎたら、歯をみがいてはいけない」(2016年9月24日・10月1日号)という特集記事だ。

同記事では、『歯はみがいてはいけない』(講談社刊)の著者で現役歯科医の森昭さんが、「誤った歯みがきの習慣」に警鐘を鳴らした。なかでも衝撃的なのは、「毎食後の歯みがきは、歯と歯ぐきにダメージを与え続け、歯の喪失だけではなく、全身疾患のリスクを高める」との指摘だった。

歯を失う主な原因は「虫歯」と「歯周病」の2つだ。現在、日本人の80%以上は虫歯を持っているとされ、歯周病の有病率は20代で約7割、30~50代で約8割、60代にいたっては約9割に達する。

そして歯周病のもととなる歯周病菌は、口の中の毛細血管を通じて全身に広がり、脳卒中や心筋梗塞の原因となったり、糖尿病や認知症にも関連するといわれている。もはや、歯のケアを怠ると生じる歯周病は、全身の疾患に関係するというわけなのだ。

では、なぜ食後に歯をみがいてはいけないのだろうか。森さんによると──。食事中に糖分を摂取すると口の中が酸性に傾き、歯の成分であるリンやカルシウムが唾液に溶け出して、歯が「軟らかく」なる。この時、歯ブラシでゴシゴシとみがくと、毛先があたって軟らかい歯が削れてしまう。さらにひどい場合は、ブラッシングにより歯の根元が楔(くさび)状にえぐれてしまうというのが、『週刊現代』に書かれた主張だ。

とくに中高年や高齢者は歯や歯ぐきが弱っているので、ブラッシングで歯が傷つき、虫歯や歯周病が悪化して全身疾患にいたるリスクが高いという。

宇田川歯科医院院長の宇田川義朗さんは、「確かに、食後に歯の成分が溶けることはあります」と指摘する。

「口内にひそむ細菌は歯に付着してプラーク(歯垢)となります。プラークに生息するミュータンス菌やラクトバチラス菌などの『虫歯菌』は、食べ物に含まれる糖質を分解して酸を作ります。この酸が歯の成分であるリンやカルシウムを溶かすことを『脱灰』といい、ひどくなると歯に穴が開いてしまう。この脱灰は食事のたびに起こっています」

だからといって、食後に歯みがきをしても、歯が「削れる」リスクは少ないと宇田川さんは主張する。

「食事中に脱灰が生じるのは、プラークが付着した歯だけです。しかも、脱灰が生じても口のなかの唾液が酸を中和して、溶けた歯の表面を元に戻す『再石灰化』が行われます。口内では常に脱灰と再石灰化が繰り返されるので、歯みがきをしても心配はいりません。歯が溶けるのはプラークが付着した場所だけなので、むしろ歯みがきで積極的にプラークを除去すべきです」

東京歯科大学組織・発生学講座准教授の見明康雄さんも、「食後の歯みがきは必要です」と指摘する。

「細菌のかたまりであるプラークができやすいのは、歯と歯の隙間や奥歯の溝の部分です。ここを放置すると食べかすがプラークにくっつき、脱灰が進んで虫歯がひどくなります。毎食後の歯みがきで、こまめに食べかすを除去すると、虫歯予防になります」

歯をみがくから歯が抜けるのではなく、歯をみがかないから歯が抜けるのだと、宇田川さんと見明さんは口をそろえる。

その一方、「毎食後に歯をみがく必要はありません」と指摘する歯科医もいる。内田歯科院長の内田成一さんはこう話す。

「食べかすが虫歯に有害なプラークになるまでに約24時間、歯周病に有害なプラークになるまで約72時間かかるといわれます。そういう意味で、1日3回の食事の後すぐに歯をみがくことは、あまり意味がないといえます」

では、歯みがきはいつ行うのが最も効果的なのか。女性セブンが取材した歯科医の皆さんはいずれも、「絶対に寝る前です」と強調する。

「睡眠中は唾液の分泌が極端に少なくなるため、歯の奥にみがき残した汚れが溜まっているとプラークに変わってしまう。虫歯や歯周病も進行します。それを防ぐため、毎日必ず、寝る前にしっかり歯をみがくべきです。口臭予防のため、朝だけていねいにみがくという人もいるようですが、それは間違いです。夜こそていねいに歯をみがく習慣をつけましょう」(内田さん)

※女性セブン2016年10月13日号

参照元 : NEWSポストセブン


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