2019年2月3日日曜日

消毒液は傷の治りを遅くし、逆に悪化させる

消毒液はキズの治りを遅くする

これまで、常識と考えられていたことが見直される事は、世の中によくある話で、それは医学の世界でも例外ではありません。けがや火傷(やけど)をすると、消毒をしてガーゼをあて乾燥させることは、これまで傷の治療の常識として広く行われてきました。ところが近年、傷は消毒せずに、しめらせて治療する方法が注目されています。

その理由は、消毒薬は傷口を刺激し、かえって傷を悪化させると考えられるようになったからです。消毒液を塗ると傷が痛むのがその証拠の一つです。傷口では傷を治すため体から体液が分泌され、液の中でいろいろな細胞が働いています。消毒薬はそれらを殺してしまい、体が治そうとしているのを妨害しているのです。

また、皮膚には他の菌が入ってこないよう我々の体を守ってくれる「常在菌」という良い菌がいますが、消毒液により「常在菌」が死んでしまい、悪い病原菌が侵入しやすくなるのです。

悪い病原菌に対しても消毒薬は有効ですが、病原菌を完全になくすことは無理ですし、たとえ傷口に少しぐらいの病原菌がいても化膿することはまれです。汚れた傷は、水道水などできれいに洗うことが大切です。


子どもの傷に湿潤療法 消毒不要、かさぶた作らず治す

2018年8月20日06時00分



まだまだ夏休み。子どものケガも多い季節です。転んですりむいたり切ったりしたとき、どんな手当をしたら良いのでしょうか。消毒は必要? 傷を乾かさずに治す「湿潤療法」って何? 傷が乾いてしまったら、もう打つ手はないの? つまずきやすいポイントを整理して紹介します。

湿潤療法「少し湿った状態で治す」
傷の手当てといえば、ひと昔前は、傷口を消毒してガーゼなどをあてて、乾かして治すのが一般的だった。ところが最近では、傷口を乾かさずに治す「湿潤療法」がスタンダードになっている。「湿潤療法とは、少ししめった状態で治す治療のことです」と、きずときずあとのクリニック豊洲院長の村松英之さん(形成外科)は話す。

ケガをすると、まず出血が起こって傷口でかたまり、浸出液と呼ばれる体液がしみ出す。そして、皮膚や傷痕をつくる細胞が働いて、傷が治っていく。浸出液や血液が乾燥して固まったのが、かさぶただ。

浸出液には、傷を治すために必要な成分がたくさん含まれている。ところが、乾燥すると機能が十分に発揮出来ず、傷の治りが遅くなるという。そこで出てくるのが湿潤療法だ。かさぶたを作るよりも早く、きれいに治せる。

消毒不要、水で洗って乾かさない
家庭で湿潤療法を行うには、まず傷口を水道水でよく洗う。その後、傷口が乾かないように、ハイドロコロイド素材の「家庭用創傷パッド」(傷パッド)などで覆えばOKだ。

傷パッドは、浸出液を吸収するとゲル化して、傷口にふたをする。傷口の乾燥を防ぐことで浸出液を保ち、治癒を促す仕組みだ。傷口を消毒する必要はない。消毒薬はばい菌を殺すが、健康な皮膚の細胞も傷つけてしまうという。

傷パッドが手元にない場合は、傷口にワセリンを塗って、くっつかないガーゼ(表面がシリコンメッシュなどでコーティングされている非固着性ガーゼ)などで覆うことで乾燥を防ぎ、治癒を促す方法もある。

傷パッドは「キズパワーパッド」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)や「ケアリーヴ治す力」(ニチバン)、「ムヒのキズパッド」(池田模範堂)などの名前で売られている。

全体がハイドロコロイド素材のものや、防水フィルムの中央部分にだけハイドロコロイド素材のパッドが付いているものなど、様々な形のものがある。店頭では表示をよく見て、傷の大きさにあったものを選ぶとよい。



ハイドロコロイド素材の家庭用創傷パッドの例。さまざまなものが市販されている。

湿潤療法、挫折しそうになった時のポイント
こうして見ると非常に簡単な「湿潤療法」だが、家庭で取り組もうとして、つまずいた経験はないだろうか。市販の家庭用創傷パッドの注意書きを読むと、実にたくさんの「禁止事項」が書かれている。

例えば、「感染している傷には使用しない」「かさぶたには使用しない」「3歳未満には使用しない」「切って使用してはいけない」などだ。また、薬局で「4~5日貼りっぱなしでよい」などの案内を受けることもある。一体、どんな時に使ってよくて、どんな時ならダメなのだろうか。

▼感染のある傷とは?「じくじく」は化膿?

傷口に細菌が感染すると化膿(かのう)が起こる。痛みが出て、はれたり、赤くなったり、局所的に熱を帯びたように感じたりする症状が現れる。39度を超える発熱が起こる場合もあるという。こうした場合は、自己判断で傷パッドを貼らずに医療機関を受診したほうがよい。

一方、同じように傷口が「じくじく」して見えても、感染を示す症状がない場合もある。これは、パッドの材料であるハイドロコロイド素材が水分を吸ってとけて傷口に残っている可能性が高い。水道水でよく洗い、新しい傷パッドに貼り替える。

なついキズとやけどのクリニック院長の夏井睦さん(形成外科)は「子どもが平気な顔で遊んでいるくらいなら、心配はいらないでしょう」と話す。

▼できてしまったかさぶたのケアは?

かさぶたに傷パッドをはると、はがすときに一緒にはがれて傷を深くする恐れがある。また、かさぶたの下にばい菌を閉じ込めている場合もあるため、かさぶたへの使用を禁止している製品は多い。

ただ、かさぶたは、浸出液が乾燥してかたまったものだ。水溶性のため、ハイドロコロイド素材のパッドで密封すると溶けてなくなることもある。傷が乾いてしまったからといって諦めず、医師に相談してみるとよい。

▼2歳以下の子どもには使えない?

傷パッドの注意書きには、よく「3歳未満(2歳以下)に使わないように」とある。メーカーによると、「子どもの肌は大人より薄いため理論的に使用を避けた方がよい」ためだという。はがす際に肌を傷つける恐れもある。

ただ、医療現場では医師の裁量の下で、子どもにもハイドロコロイド素材のパッドが使われるケースもある。まずは医師に相談し、傷や肌の状態にあった適切な方法をあおぐとよいだろう。

▼張りっぱなしでよい?

傷パッドは、できれば1日1回は貼り替えて傷の様子を確認したい。浸出液が多くてパッドから漏れてしまう場合も、貼り替える。

浸出液は、傷口にとっては必要な成分だ。だが、健康な皮膚に付着したままになると、皮膚が軟化して、細菌などに感染するリスクが高まる。また、あせもなどのトラブルにもつながる。

▼切ってはいけない?

製品によっては、切って使うと、側面から余分な水分を吸収する恐れがあるため、切って使わないようにうたう製品もある。一方で、ロール状になっていて、切って使えるハイドロコロイド製品もあるので、傷の大きさに合わせて選択するとよい。

傷の大小にかかわらず「不安なら受診を」
化膿している場合以外にも受診したほうがいい場合がある。傷が深い、開いている、洗っても砂やどろなどで汚れている(傷口に異物が残っている)、血が止まらない、動物にかまれた場合などだ。そして傷の大小にかかわらず「不安なら受診を」と夏井さんは話す。

医療機関では、感染があれば抗菌薬の飲み薬などが処方される。傷の治りを早くする外用薬が処方されることもある。また、適切なホームケアの指導をうけることができる。

ケガの治療は、形成外科が詳しい。日本創傷外科学会はホームページで、傷の治療に詳しい全国の専門医の一覧を公表している。

日本創傷外科学会

<湿潤療法>

古くは1960年代に、傷をポリエチレンフィルムで覆って湿潤環境に置くと、早く治ることが動物実験で報告されている。日本では1990年代の終わりごろから、外傷の治療に使われるようになってきた。家庭向けには2004年にはじめて、ジョンソン・エンド・ジョンソンが家庭用創傷パッド「キズパワーパッド」を発売。徐々に認知度が高まり、同社では2015年以降、売上金額がおおむね2桁成長を続けている。

<アピタル:医療と健康のホント>
ノロウイルスで嘔吐…家庭での消毒、除菌グッズの選び方(鈴木彩子)

 参照元 : 朝日新聞









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