なぜ日本は「発達障害大国」なのか 国別統計で常にトップレベルの理由
2018.2.17 16:10
天才と呼ばれる人は「発達障害」の傾向を指摘されることがある。海外ではエジソン、アインシュタイン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ。国内では楽天の三木谷浩史氏もADHDの傾向があることを明かしている。その「特性」を活かすにはどうすればいいのか。2人の専門家に聞いた--。
“10人に1人”大人の発達障害の謎
20代半ばの会社員Aさんは、昔から「空気が読めない」といわれてきた。先日も会議に遅れてきた部長に、「部長、3分の遅刻ですよ」と事実を伝えたところ嫌な顔をされた。上司に「頭を冷やせ!」といわれ、水道水で頭を冷やして唖然とされたこともある。いつも一生懸命やっているのに、なぜか叱られることが多いと感じている。
一方、30代女性の事務職員Bさんは、ケアレスミスが多いのが悩みだ。会議の日時を間違えたり、金額の記入を間違えたりはしょっちゅうだ。人の話を聞きながらメモを取ることや、話を要約するのも苦手で複雑な内容はメールで送ってもらうようにしている。
頭はいいのだが、どこか行動が奇妙でちぐはぐ。感情や意思の疎通がスムーズにいかない、本人も努力しているようだが直らない。そんな悩みを職場で抱える人が増えている。
近年「大人の発達障害」に関心が高まっている。これまで子どもの問題と思われがちだった発達障害が、実は大人の問題でもあり、職場や家庭で起きるトラブルの原因の1つとしてクローズアップされているのだ。
日本で発達障害者支援法が施行されたのは、2005年のこと。以来、子どもに対しては、乳幼児検診で早期発見、早期療育、早期支援が謳われてきたが、現在すでに大人である層は、その社会的ケアからこぼれ落ちて成長してきた世代だ。重度の自閉症や知的な遅れを伴う場合は比較的早く発見され、医療や支援に結びつく機会も多い。一方、知的に遅れがない場合は本人の性格や個性と捉えられ医療までたどり着かないケースもある。
しかし、学生時代までは目立った問題はなくても、就職を機に、その特性を原因とするトラブルが発生することがある。「本人の努力不足」や「家庭のしつけの問題」「上司のマネジメントの不備」ではなく、発達障害の視点からのアプローチをすることでトラブル解決の糸口が見えてくることもある。日本人の10人に1人は発達障害の傾向がある。そんな指摘をする専門家もいる。大人の発達障害の問題点や、課題を探ってみよう。
▼「大人の発達障害」職場だと…
Tさん●20代男性●会社員
高学歴で各種スキルや語学力は高いものの、相手の意図するところを理解するのが苦手。新入社員の頃「わからないことがあれば、いつでも聞きにこいよ」といってくれた上司がおり、その上司が出席中の会議の席に「部長、わからないことがあるのですが」と聞きに行き、周囲を唖然とさせたこともある。「資料をつくってくれ」「臨機応変に対応しろ」など、あいまいな指示がわからず、上司から叱責されることもしばしば。自分の正当性を伝えようとするも「言い訳」「反論」と捉えられ、ストレスからうつ病に。診療科でうつ病の治療と同時に、心理検査や知能検査を受けASDであることが判明。
Fさん●30代男性●SE
国立の大学院卒業後、大手情報系サービス企業に就職。昔から「理屈っぽい」と評されるも、論理的で完璧主義的な性格はSEとして最適、上司からも「真面目で正確」と高く評価される。しかし、月200時間の残業が続いたプロジェクトが完成した直後から、心身ともに疲労感を強く感じ出社できなくなる。診療科では「適応障害」と診断。詳細な検査を受けると、ASDやADHDの診断は下りなかったが、その傾向は強く「ハイコントラスト知覚特性」があることが判明。まったく疲れを感じないか、突然体が動かなくなるほど疲れるかといった極端な知覚を持っていた。
Kさん●30代女性●国家公務員
昔から得意なのは理数系で、読書感想文は苦手。ストレスや疲れがたまると上下関係を配慮できず、上司に「そんなこともわからないんですか」といってしまったことも。中学、高校と不登校を経験しつつも、国家公務員として就職。整理整頓を重視するあまり、自分の机には“マイテプラ”も常備してある。職場では理解ある上司に恵まれ、得意な数学的知識も活かせる仕事に就いている。しかし、日常の「変化」に弱く、上司が配置換えで隣の列に移動した際は、パニックになり泣き出してしまった。海外赴任や流産などを機にうつ病を発症。「うっすらとASDとADHD」と診断される。
病気ではないので「治す」ものではない
官公庁や大企業が集まる東京の一等地、虎ノ門に「大人の発達障害外来」の看板を掲げるクリニックがある。「メディカルケア虎ノ門」だ。03年に五十嵐良雄医院長により開設され、うつ病や適応障害などの職場の精神的ケアに力を入れてきた。一般外来のほかにわざわざ「大人の」と銘打ち発達障害外来を掲げた理由を五十嵐院長はこう語る。
「うつ病などのために仕事を休職し、当院で復職のためのプログラムに参加している方の約3割は、実は発達障害が根っこに潜む。その場合、仮にうつ病を治しても根本的な問題は残ったままで、またすぐに職場で問題が生じてしまうため、うつ病の治療と並行して発達障害専門のケアが必要になるんです」
現在、日本で発達障害を診断できるクリニックや医師はまだ少なく、しかもそのほとんどは子どもが対象だ。同じ発達障害でも、子どもと大人では診断方法やその後のケアも大きく異なり、大人に特化した発達障害外来の必要性を強く感じたという。
このクリニックでは、診断後の治療プログラムも充実している。月1回土曜日に3時間かけて行われるレクチャーには、多いときで80名ほどの参加者が集まる。発達障害に特化したプログラムも人気だ。半年から1年をかけて行う復職支援プログラムでは、他者とのコミュニケーションにおいて起こりがちな「職場トラブル」をテーマにロールプレーを行うなど、復職に向けての具体的なアプローチに取り組んでいる。
「発達障害の場合は基本的に薬はなく、あったとしてもADHD(注意欠如・多動性障害)用に2種だけ。そもそも発達障害は病気ではないので、『治す』ものではない。自らの特性を理解して得意な部分は伸ばし、苦手な分野は工夫して補えるよう練習していくしか方法はないのです」(五十嵐氏)
▼それぞれの特徴
ASD:自閉スペクトラム症
コミュニケーションや対人関係、想像力のかたより。パターン化した興味や活動など。
●空気を読むことが苦手、言葉の比喩や裏の意味がわからない。
●人との距離感が独特で、一方的だったり、拒絶的だったりする。
●好きなテーマを語りだすと止まらない、人の話を聞くのが苦手。
●過去のことはよく覚えているが、未来を想像し予定を立てるのが苦手。
●時に過去の嫌な出来事がフラッシュバックして情緒不安定になる。
●視覚、聴覚などの感覚が過敏。
●同時に複数のことを処理することが苦手。
●他者視点に立って考えることが苦手。
ADHD:注意欠如・多動性障害
多動的、衝動的、不注意。
●常に動き回ったり思考がせわしない。
●思い立ったことをすぐにやりたくなる。
●忘れ物やミスが多い。
●部屋が片づけられない。
SLD:限局性学習障害
知的な遅れや視覚や聴覚などに問題はないが、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算・推論」などの学習分野において著しい困難を有する。「読字障害(ディスレクシア)」や、「書字表出障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュリア)」などが代表的。
高学歴にはグレーゾーンの発達障害が多い?
虎ノ門という場所柄もあり、来院者は極めて高学歴、かつ有名企業や官公庁に勤める人も多い。受診条件は「以前に発達障害の診断を受けていないこと」であるため、発達障害でも極めて軽微ないわゆる「グレーゾーン」である人がほとんどだ。
そういった人は発達障害が軽微でも高学歴なために周囲から期待され「東京大学を出るほど秀才なのに、こんな簡単なこともできないのか」と高いハードルを設けられてしまう場合も。発達障害の特徴である「こだわりの強さ」や「好きなことは極端に集中する」側面を活かして優秀な学業を修めてきたが、就職や管理職への昇進などのタイミングで不得手な分野が浮き彫りになる例がある。ある優秀な経理マンは昇進で管理職になった瞬間、うまくいかなくなったという。部下から上層部にクレームが入り、心を病んだケースも。
「もっとも受診者の多くは、発達障害の特徴を知れば、論理的に自己分析をして真面目にプログラムに取り組みますよ。プログラムを経て復職していく人々は約9割ほどです」(五十嵐氏)
▼ASDとADHD、得意・不得意分野
ASD:自閉スペクトラム症
得意な仕事例
・規則性、計画性、深い専門性が求められる設計士や研究者
・緻密で集中力を要するSEやプログラミング
・膨大なデータを扱う財務や経理、法務
不得意な仕事例
・顧客ごとの個別対応や、計画が随時変更していく作業
・対話中心の仕事や、上司からのあいまいな指示
ADHD:注意欠如・多動性障害
得意な仕事例
・自主的に動き回る営業職
・ひらめきや企画力、行動力が求められる企画開発、デザイナー、経営者、アーティスト
不得意な仕事例
・緻密なデータや細かいスケジュールなどの管理
・長期的な計画を立て、じっくり進める仕事
・行動力より忍耐力が必要とされる作業
発達「障害」ではなく、発達の「ずれ」
発達障害は、先天的な脳の機能障害である。遺伝的、環境的な要因などが複雑に絡み合っていると考えられているが、実はその全貌は明らかになっていない。かつては愛情の薄い「冷蔵庫マザー」に育てられた子が自閉症になると考えられていたが、いまは親のしつけは原因と関係ないとされている。
信州大学病院診療教授の本田秀夫氏は「『障害』という言葉で誤解を招いている側面もある」と説明する。
「Neurodevelopmental Disorders。これが現在の発達障害の英語表記です。つまり直訳すると『神経発達のずれ』。これまで人間は誰もが定型の曲線を描いて発達していくと考えられてきたのが、どうやら人それぞれ発達のスピードは異なり、かつ能力のすべてがパラレルに成長していくわけでもないということがわかってきたんです。発達障害は、決して発達しないわけではなく、発達の仕方が独特で定型発達の秩序からは外れているということです」
「Disorder」という言葉が精神医学で初めて使われたとき、専門家たちはどう日本語訳するか悩んだという。いま、日本の医学界では「神経発達症」と呼ぶよう提唱している。「障害」ではなく「症」であることが重要で、たとえば『自閉スペクトラム障害』ではなく、『自閉スペクトラム症』が学界の推奨する呼び方だ。
ではなぜ世間で「発達障害」の呼び名が一般的なのか。1つには社会概念としてすでに定着しており「発達障害者支援法」や「発達障害者支援センター」など行政用語として使われていること、また実際にその特性が原因で著しく日常生活に支障をきたす場合、障害として認定されることで、障害者雇用枠で採用されるなどの実態もあるからだ。
発達障害の「カツオ君」は優秀な営業マン
一方、本田氏は発達障害のプラス面も強調する。「発達障害というとよくないイメージばかりが先行していますが、本来は必ずしも悪いものといい切れないんです。たとえば多動・衝動性が強いADHDの代表的な例としては、『サザエさん』に出てくるカツオ君を思い出してください。おっちょこちょいで思いついたことはすぐに行動に移してお父さんに怒られる。でも、彼がもし営業職などに就いたら、活動的で明るくて、どこか憎めないキャラとして愛されるかもしれません。忘れ物やミスはあっても、さりげなく周囲がフォローしてくれたりして。でももし経理などに就いたら、ミスだらけで怒られる毎日が続くかもしれません」。
努力できること、できないことの差が極端なため、職業選びは大切だ。日本企業が新卒者に求める一番のスキルは「コミュニケーション能力」との調査結果(図)もあり、これは発達障害のASD(自閉スペクトラム症)には苦手分野といえる。
「実はかくいう僕もADHDとASDの特性があります。予定を立てるのも苦手だし、夢中になると寝食を忘れてのめりこんでしまう。職業を間違っていたら、確実にダメだったでしょうね。でも医者や研究者のほとんどはASDタイプです。こだわりの強さが強みにつながった例です」(本田氏)
なぜ日本は「発達障害大国」なのか
「発達障害を考えるとき、思い出してもらいたいのは童話の『みにくいアヒルの子』です。白鳥なのにアヒルの群れに入ってしまった、それが発達障害の人が置かれた状況。どんなに頑張っても白鳥はアヒルにはなれません。『努力してアヒルになれ』と叱咤激励しても、アヒルのようには鳴けず、結局、白鳥の子は白鳥にしか育ちません。白鳥には白鳥だけができることがあるはずで、その得意な分野を活かしていけばいいんです。僕は一当事者としても、声を大にしてこういいたい。『発達障害ライフを楽しもう』と」(本田氏)
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツなど、実際に、その特性を強みにしてビジネスに発展させた人物には枚挙にいとまがない。楽天の三木谷浩史氏も自らADHDの傾向を持つと語っている。ジョン・F・ケネディ米元大統領、坂本龍馬やエジソン、アインシュタインなども発達障害の傾向を指摘されている。発達障害=天才であるわけではないが、その特性を活かさなければ彼らの成功はなかったはずだ。
実は日本は発達障害大国でもある。本来なら人種で差が出るものではないが、なぜか国ごとに統計を取ると常にトップレベルで数が多いという。
「文化の差があるかもしれません。同じADHDやASDでも、ほかの国では許容されるレベルが、日本では問題視されてしまう。日本は国家レベルで空気を読むことを国民に求める風潮があり、人々は互いに完璧を求めすぎているように思います」(同)
いつの時代も一定数、発達障害は存在した。かつてなら社会に溶け込み、あるいは「変人だけど面白い」と受け入れられてきた特質が許容されない社会になってきたことが、昨今の「発達障害」の知名度の上昇に一役買っているのかもしれない。
利益を追求する企業で、個人のケアをどこまですべきかという問題はあるが、個人の努力と同時に、社会の側も知識を持つことでトラブルを減らし、新たな成果に結びつく可能性があるのではないだろうか。
五十嵐良雄(いがらし・よしお)
1976年、北海道大医学部卒。ミラノ大(イタリア)やユトレヒト大(オランダ)に留学した。医療法人全和会秩父中央病院長などを経て2003年に職場の「うつ」などが専門のメディカルケア虎ノ門を開設。
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1988年、東京大学医学部卒。山梨県立こころの発達総合支援センター所長を経て2014年信州大医学部附属病院子どものこころ診療部診療教授に。乳幼児から成人まで幅広い世代の発達障害の診療経験が豊富。
(フリーランスライター 三浦 愛美 撮影=鈴木聖也、奥谷 仁 写真=iStock.com)(PRESIDENT Online)
参照元 : sankeibiz
「大人の発達障害」を疑ったら試したい20のチェックリスト 社会構造の変化が発達障害を生んでいる
2017/04/15
まずは何も考えず、下記のチェックリストで【A】と【B】のどちらに多く当てはまるか、みなさんチェックしてみてください。
【A】 ・何かをするときは一人でやるほうがいい ・同じやり方を何度も繰り返し用いることが好き ・何かを想像するとき、イメージを簡単に思い浮かべることができる ・自分では丁寧に話したつもりでも、話し方が失礼だと周囲の人に言われることがある ・他のことが全く気にならなくなるくらい、何かに没頭してしまうことがある ・他の人が気がつかないような小さな物音に気がつくことがある ・車のナンバーや時刻表の数字など、特に意味のない情報に注目することがある ・相手の顔を見てもその人が考えていることや感じていることがわからない ・あることを、他の人がどのように感じるかを想像するのが苦手 ・他の人の考え(意図)を理解することは苦手
【B】 ・物事を行うにあたって、難所は乗り越えたのに詰めが甘くて仕上げるのが困難だったことがよくある ・計画性を要する作業を行う際に、作業を順序立てるのが困難だったことがよくある ・約束や、しなければならない用事を忘れたことがよくある ・じっくり考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることがよくある ・長時間座っていなければならないときに、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることがよくある ・まるで何かに駆り立てられるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることがよくある ・つまらない、あるいは難しい仕事をする際に、不注意な間違いをすることがよくある ・直接話しかけられているにもかかわらず、話に注意を払うことが困難なことがよくある ・家や職場に物を置き忘れたり、物をどこに置いたかわからなくなって探すのに苦労したことがよくある ・外からの刺激や雑音で気が散ってしまうことがよくある
いかがでしたでしょうか。【A】が多かった人もいれば【B】が多かった人、どちらも同じ数だったという人もいるかもしれません。
これらのテストは【A】がアスペルガー症候群のチェックリスト、【B】がADHD(注意欠如多動性障害)のチェックリストです。
発達障害は、脳機能の先天的な障害
いま、大人になってから発達障害とわかる人が増えています。
発達障害とは、脳機能の先天的な障害のこと。生まれながらに脳の働きにかたよりがあり、それが様々な特性となって現れるもののことです。
多くの場合は幼少期に診断されますが、最近では、大人になってから、うつ症状や不安症状などの二次的な障害が起きて初めて発達障害とわかるケースが増えてきています。
これまで1万人以上を診てきた、発達障害のスペシャリストであるどんぐり発達クリニックの宮尾益知先生に、発達障害について話を伺いました。
誰でもどちらかの特性を持っている 「最初にやっていただいたチェックリストは、半分以上あてはまると、【A】の場合はアスペルガー症候群、【B】の場合はADHDの疑いがあると言われます。しかし、これまで発達障害とは関係ないと思っていた人でも、意外と多くあてはまって驚いたかもしれません。
発達障害とは、風邪やインフルエンザのように0か100ではなく、グレーゾーンが大きいもので、誰にでも気分の波があるように、生活環境や人間関係などで症状が強く出る場合もあれば、不自由がないまま過ごせる場合もあります。
『あの人は几帳面でいつも趣味に没頭している』とか『あの人は忘れっぽい人だけど、人当たりはいい』などというように、人には個性があります。発達障害とはその個性の波が強すぎるために、周りに迷惑をかけたり、自分ができないことが浮き彫りとなって生きづらさを感じていたり、うまく世の中が渡れずに困っている状態のことをいいます。
人は誰でもどちらかの特性を持っているもの。アスペルガー症候群、ADHDのチェックリストで数が多く当てはまったからといって、現在までの生活で不自由を感じていなければ全く問題はありません」
うつ病で見過ごされているケースも
「しかしながら、自分では頑張っているつもりなのにトラブルやミスが続き、周囲に迷惑をかけてしまっている、いつも同じことで怒られてしまうなどで、うつ症状や不安症状などが出るようになることもあります。
うつ病だと言われたまま治療を続けていたりと、見過ごされている場合も少なくありません。
実際に、患者さんの中でもうつ病の治療をしていたけれどもなかなかよくならないといって様々な精神科を受診し、何年も経ってから私のところへ来て初めて発達障害だとわかったケースもあります。精神科医でも発達障害の診断はとても難しいものなのです」
社会の風当たりが強くなっている 「現在は限られた時間の中で多くの情報をいかに処理できるかが重要となっていて、個人の違いにいちいち対応できるだけの余裕が社会全体でなくなっており、発達障害の人たちに対する風当たりも強くなってきています。
第一次産業が中心だった頃は、病気の認識もまだなかったということもありますが、発達障害は『個性』と捉えられていて、一人ひとりに合わせる余裕がありました。
子どもの頃の話でいえば、近所の柿を盗んだり、隣の子を授業中に蹴飛ばしたりする子は単なる『やんちゃ』な子。近所の怖いおじさんから大目玉を食らっても、それで許されるような環境がありました。しかし今はどうでしょうか。どちらも裁判沙汰、警察を呼ばれてしまうことになります。
社会の構造が変わってきたために、発達障害の人の強い個性やミスなどが目立つようになり、発達障害という言葉がより注目されるようになってきたのだと考えています。
その中でもアスペルガー症候群とADHDは、大人になってから発見されるケースが少なくない発達障害ですが、特に診断は受けていないけれども自分で『発達障害かも』と感じている場合や、診断は受けていない上に自分自身でも全く自覚がない場合が『大人の発達障害』という言葉で問題となっています」
参照元 : 文春オンライン
▼大人の発達障害と生きる とくダネ 2017年 12月21日
▼「発達障害ADHD・アスペルガー症候群」ザ!世界仰天ニュース
2018.2.17 16:10
天才と呼ばれる人は「発達障害」の傾向を指摘されることがある。海外ではエジソン、アインシュタイン、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ。国内では楽天の三木谷浩史氏もADHDの傾向があることを明かしている。その「特性」を活かすにはどうすればいいのか。2人の専門家に聞いた--。
“10人に1人”大人の発達障害の謎
20代半ばの会社員Aさんは、昔から「空気が読めない」といわれてきた。先日も会議に遅れてきた部長に、「部長、3分の遅刻ですよ」と事実を伝えたところ嫌な顔をされた。上司に「頭を冷やせ!」といわれ、水道水で頭を冷やして唖然とされたこともある。いつも一生懸命やっているのに、なぜか叱られることが多いと感じている。
一方、30代女性の事務職員Bさんは、ケアレスミスが多いのが悩みだ。会議の日時を間違えたり、金額の記入を間違えたりはしょっちゅうだ。人の話を聞きながらメモを取ることや、話を要約するのも苦手で複雑な内容はメールで送ってもらうようにしている。
頭はいいのだが、どこか行動が奇妙でちぐはぐ。感情や意思の疎通がスムーズにいかない、本人も努力しているようだが直らない。そんな悩みを職場で抱える人が増えている。
近年「大人の発達障害」に関心が高まっている。これまで子どもの問題と思われがちだった発達障害が、実は大人の問題でもあり、職場や家庭で起きるトラブルの原因の1つとしてクローズアップされているのだ。
日本で発達障害者支援法が施行されたのは、2005年のこと。以来、子どもに対しては、乳幼児検診で早期発見、早期療育、早期支援が謳われてきたが、現在すでに大人である層は、その社会的ケアからこぼれ落ちて成長してきた世代だ。重度の自閉症や知的な遅れを伴う場合は比較的早く発見され、医療や支援に結びつく機会も多い。一方、知的に遅れがない場合は本人の性格や個性と捉えられ医療までたどり着かないケースもある。
しかし、学生時代までは目立った問題はなくても、就職を機に、その特性を原因とするトラブルが発生することがある。「本人の努力不足」や「家庭のしつけの問題」「上司のマネジメントの不備」ではなく、発達障害の視点からのアプローチをすることでトラブル解決の糸口が見えてくることもある。日本人の10人に1人は発達障害の傾向がある。そんな指摘をする専門家もいる。大人の発達障害の問題点や、課題を探ってみよう。
▼「大人の発達障害」職場だと…
Tさん●20代男性●会社員
高学歴で各種スキルや語学力は高いものの、相手の意図するところを理解するのが苦手。新入社員の頃「わからないことがあれば、いつでも聞きにこいよ」といってくれた上司がおり、その上司が出席中の会議の席に「部長、わからないことがあるのですが」と聞きに行き、周囲を唖然とさせたこともある。「資料をつくってくれ」「臨機応変に対応しろ」など、あいまいな指示がわからず、上司から叱責されることもしばしば。自分の正当性を伝えようとするも「言い訳」「反論」と捉えられ、ストレスからうつ病に。診療科でうつ病の治療と同時に、心理検査や知能検査を受けASDであることが判明。
Fさん●30代男性●SE
国立の大学院卒業後、大手情報系サービス企業に就職。昔から「理屈っぽい」と評されるも、論理的で完璧主義的な性格はSEとして最適、上司からも「真面目で正確」と高く評価される。しかし、月200時間の残業が続いたプロジェクトが完成した直後から、心身ともに疲労感を強く感じ出社できなくなる。診療科では「適応障害」と診断。詳細な検査を受けると、ASDやADHDの診断は下りなかったが、その傾向は強く「ハイコントラスト知覚特性」があることが判明。まったく疲れを感じないか、突然体が動かなくなるほど疲れるかといった極端な知覚を持っていた。
Kさん●30代女性●国家公務員
昔から得意なのは理数系で、読書感想文は苦手。ストレスや疲れがたまると上下関係を配慮できず、上司に「そんなこともわからないんですか」といってしまったことも。中学、高校と不登校を経験しつつも、国家公務員として就職。整理整頓を重視するあまり、自分の机には“マイテプラ”も常備してある。職場では理解ある上司に恵まれ、得意な数学的知識も活かせる仕事に就いている。しかし、日常の「変化」に弱く、上司が配置換えで隣の列に移動した際は、パニックになり泣き出してしまった。海外赴任や流産などを機にうつ病を発症。「うっすらとASDとADHD」と診断される。
病気ではないので「治す」ものではない
官公庁や大企業が集まる東京の一等地、虎ノ門に「大人の発達障害外来」の看板を掲げるクリニックがある。「メディカルケア虎ノ門」だ。03年に五十嵐良雄医院長により開設され、うつ病や適応障害などの職場の精神的ケアに力を入れてきた。一般外来のほかにわざわざ「大人の」と銘打ち発達障害外来を掲げた理由を五十嵐院長はこう語る。
「うつ病などのために仕事を休職し、当院で復職のためのプログラムに参加している方の約3割は、実は発達障害が根っこに潜む。その場合、仮にうつ病を治しても根本的な問題は残ったままで、またすぐに職場で問題が生じてしまうため、うつ病の治療と並行して発達障害専門のケアが必要になるんです」
現在、日本で発達障害を診断できるクリニックや医師はまだ少なく、しかもそのほとんどは子どもが対象だ。同じ発達障害でも、子どもと大人では診断方法やその後のケアも大きく異なり、大人に特化した発達障害外来の必要性を強く感じたという。
このクリニックでは、診断後の治療プログラムも充実している。月1回土曜日に3時間かけて行われるレクチャーには、多いときで80名ほどの参加者が集まる。発達障害に特化したプログラムも人気だ。半年から1年をかけて行う復職支援プログラムでは、他者とのコミュニケーションにおいて起こりがちな「職場トラブル」をテーマにロールプレーを行うなど、復職に向けての具体的なアプローチに取り組んでいる。
「発達障害の場合は基本的に薬はなく、あったとしてもADHD(注意欠如・多動性障害)用に2種だけ。そもそも発達障害は病気ではないので、『治す』ものではない。自らの特性を理解して得意な部分は伸ばし、苦手な分野は工夫して補えるよう練習していくしか方法はないのです」(五十嵐氏)
▼それぞれの特徴
ASD:自閉スペクトラム症
コミュニケーションや対人関係、想像力のかたより。パターン化した興味や活動など。
●空気を読むことが苦手、言葉の比喩や裏の意味がわからない。
●人との距離感が独特で、一方的だったり、拒絶的だったりする。
●好きなテーマを語りだすと止まらない、人の話を聞くのが苦手。
●過去のことはよく覚えているが、未来を想像し予定を立てるのが苦手。
●時に過去の嫌な出来事がフラッシュバックして情緒不安定になる。
●視覚、聴覚などの感覚が過敏。
●同時に複数のことを処理することが苦手。
●他者視点に立って考えることが苦手。
ADHD:注意欠如・多動性障害
多動的、衝動的、不注意。
●常に動き回ったり思考がせわしない。
●思い立ったことをすぐにやりたくなる。
●忘れ物やミスが多い。
●部屋が片づけられない。
SLD:限局性学習障害
知的な遅れや視覚や聴覚などに問題はないが、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算・推論」などの学習分野において著しい困難を有する。「読字障害(ディスレクシア)」や、「書字表出障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュリア)」などが代表的。
高学歴にはグレーゾーンの発達障害が多い?
虎ノ門という場所柄もあり、来院者は極めて高学歴、かつ有名企業や官公庁に勤める人も多い。受診条件は「以前に発達障害の診断を受けていないこと」であるため、発達障害でも極めて軽微ないわゆる「グレーゾーン」である人がほとんどだ。
そういった人は発達障害が軽微でも高学歴なために周囲から期待され「東京大学を出るほど秀才なのに、こんな簡単なこともできないのか」と高いハードルを設けられてしまう場合も。発達障害の特徴である「こだわりの強さ」や「好きなことは極端に集中する」側面を活かして優秀な学業を修めてきたが、就職や管理職への昇進などのタイミングで不得手な分野が浮き彫りになる例がある。ある優秀な経理マンは昇進で管理職になった瞬間、うまくいかなくなったという。部下から上層部にクレームが入り、心を病んだケースも。
「もっとも受診者の多くは、発達障害の特徴を知れば、論理的に自己分析をして真面目にプログラムに取り組みますよ。プログラムを経て復職していく人々は約9割ほどです」(五十嵐氏)
▼ASDとADHD、得意・不得意分野
ASD:自閉スペクトラム症
得意な仕事例
・規則性、計画性、深い専門性が求められる設計士や研究者
・緻密で集中力を要するSEやプログラミング
・膨大なデータを扱う財務や経理、法務
不得意な仕事例
・顧客ごとの個別対応や、計画が随時変更していく作業
・対話中心の仕事や、上司からのあいまいな指示
ADHD:注意欠如・多動性障害
得意な仕事例
・自主的に動き回る営業職
・ひらめきや企画力、行動力が求められる企画開発、デザイナー、経営者、アーティスト
不得意な仕事例
・緻密なデータや細かいスケジュールなどの管理
・長期的な計画を立て、じっくり進める仕事
・行動力より忍耐力が必要とされる作業
発達「障害」ではなく、発達の「ずれ」
発達障害は、先天的な脳の機能障害である。遺伝的、環境的な要因などが複雑に絡み合っていると考えられているが、実はその全貌は明らかになっていない。かつては愛情の薄い「冷蔵庫マザー」に育てられた子が自閉症になると考えられていたが、いまは親のしつけは原因と関係ないとされている。
信州大学病院診療教授の本田秀夫氏は「『障害』という言葉で誤解を招いている側面もある」と説明する。
「Neurodevelopmental Disorders。これが現在の発達障害の英語表記です。つまり直訳すると『神経発達のずれ』。これまで人間は誰もが定型の曲線を描いて発達していくと考えられてきたのが、どうやら人それぞれ発達のスピードは異なり、かつ能力のすべてがパラレルに成長していくわけでもないということがわかってきたんです。発達障害は、決して発達しないわけではなく、発達の仕方が独特で定型発達の秩序からは外れているということです」
「Disorder」という言葉が精神医学で初めて使われたとき、専門家たちはどう日本語訳するか悩んだという。いま、日本の医学界では「神経発達症」と呼ぶよう提唱している。「障害」ではなく「症」であることが重要で、たとえば『自閉スペクトラム障害』ではなく、『自閉スペクトラム症』が学界の推奨する呼び方だ。
ではなぜ世間で「発達障害」の呼び名が一般的なのか。1つには社会概念としてすでに定着しており「発達障害者支援法」や「発達障害者支援センター」など行政用語として使われていること、また実際にその特性が原因で著しく日常生活に支障をきたす場合、障害として認定されることで、障害者雇用枠で採用されるなどの実態もあるからだ。
発達障害の「カツオ君」は優秀な営業マン
一方、本田氏は発達障害のプラス面も強調する。「発達障害というとよくないイメージばかりが先行していますが、本来は必ずしも悪いものといい切れないんです。たとえば多動・衝動性が強いADHDの代表的な例としては、『サザエさん』に出てくるカツオ君を思い出してください。おっちょこちょいで思いついたことはすぐに行動に移してお父さんに怒られる。でも、彼がもし営業職などに就いたら、活動的で明るくて、どこか憎めないキャラとして愛されるかもしれません。忘れ物やミスはあっても、さりげなく周囲がフォローしてくれたりして。でももし経理などに就いたら、ミスだらけで怒られる毎日が続くかもしれません」。
努力できること、できないことの差が極端なため、職業選びは大切だ。日本企業が新卒者に求める一番のスキルは「コミュニケーション能力」との調査結果(図)もあり、これは発達障害のASD(自閉スペクトラム症)には苦手分野といえる。
「実はかくいう僕もADHDとASDの特性があります。予定を立てるのも苦手だし、夢中になると寝食を忘れてのめりこんでしまう。職業を間違っていたら、確実にダメだったでしょうね。でも医者や研究者のほとんどはASDタイプです。こだわりの強さが強みにつながった例です」(本田氏)
なぜ日本は「発達障害大国」なのか
「発達障害を考えるとき、思い出してもらいたいのは童話の『みにくいアヒルの子』です。白鳥なのにアヒルの群れに入ってしまった、それが発達障害の人が置かれた状況。どんなに頑張っても白鳥はアヒルにはなれません。『努力してアヒルになれ』と叱咤激励しても、アヒルのようには鳴けず、結局、白鳥の子は白鳥にしか育ちません。白鳥には白鳥だけができることがあるはずで、その得意な分野を活かしていけばいいんです。僕は一当事者としても、声を大にしてこういいたい。『発達障害ライフを楽しもう』と」(本田氏)
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ、マイクロソフトのビル・ゲイツなど、実際に、その特性を強みにしてビジネスに発展させた人物には枚挙にいとまがない。楽天の三木谷浩史氏も自らADHDの傾向を持つと語っている。ジョン・F・ケネディ米元大統領、坂本龍馬やエジソン、アインシュタインなども発達障害の傾向を指摘されている。発達障害=天才であるわけではないが、その特性を活かさなければ彼らの成功はなかったはずだ。
実は日本は発達障害大国でもある。本来なら人種で差が出るものではないが、なぜか国ごとに統計を取ると常にトップレベルで数が多いという。
「文化の差があるかもしれません。同じADHDやASDでも、ほかの国では許容されるレベルが、日本では問題視されてしまう。日本は国家レベルで空気を読むことを国民に求める風潮があり、人々は互いに完璧を求めすぎているように思います」(同)
いつの時代も一定数、発達障害は存在した。かつてなら社会に溶け込み、あるいは「変人だけど面白い」と受け入れられてきた特質が許容されない社会になってきたことが、昨今の「発達障害」の知名度の上昇に一役買っているのかもしれない。
利益を追求する企業で、個人のケアをどこまですべきかという問題はあるが、個人の努力と同時に、社会の側も知識を持つことでトラブルを減らし、新たな成果に結びつく可能性があるのではないだろうか。
五十嵐良雄(いがらし・よしお)
1976年、北海道大医学部卒。ミラノ大(イタリア)やユトレヒト大(オランダ)に留学した。医療法人全和会秩父中央病院長などを経て2003年に職場の「うつ」などが専門のメディカルケア虎ノ門を開設。
本田秀夫(ほんだ・ひでお)
1988年、東京大学医学部卒。山梨県立こころの発達総合支援センター所長を経て2014年信州大医学部附属病院子どものこころ診療部診療教授に。乳幼児から成人まで幅広い世代の発達障害の診療経験が豊富。
(フリーランスライター 三浦 愛美 撮影=鈴木聖也、奥谷 仁 写真=iStock.com)(PRESIDENT Online)
参照元 : sankeibiz
「大人の発達障害」を疑ったら試したい20のチェックリスト 社会構造の変化が発達障害を生んでいる
2017/04/15
まずは何も考えず、下記のチェックリストで【A】と【B】のどちらに多く当てはまるか、みなさんチェックしてみてください。
【A】 ・何かをするときは一人でやるほうがいい ・同じやり方を何度も繰り返し用いることが好き ・何かを想像するとき、イメージを簡単に思い浮かべることができる ・自分では丁寧に話したつもりでも、話し方が失礼だと周囲の人に言われることがある ・他のことが全く気にならなくなるくらい、何かに没頭してしまうことがある ・他の人が気がつかないような小さな物音に気がつくことがある ・車のナンバーや時刻表の数字など、特に意味のない情報に注目することがある ・相手の顔を見てもその人が考えていることや感じていることがわからない ・あることを、他の人がどのように感じるかを想像するのが苦手 ・他の人の考え(意図)を理解することは苦手
【B】 ・物事を行うにあたって、難所は乗り越えたのに詰めが甘くて仕上げるのが困難だったことがよくある ・計画性を要する作業を行う際に、作業を順序立てるのが困難だったことがよくある ・約束や、しなければならない用事を忘れたことがよくある ・じっくり考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることがよくある ・長時間座っていなければならないときに、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることがよくある ・まるで何かに駆り立てられるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることがよくある ・つまらない、あるいは難しい仕事をする際に、不注意な間違いをすることがよくある ・直接話しかけられているにもかかわらず、話に注意を払うことが困難なことがよくある ・家や職場に物を置き忘れたり、物をどこに置いたかわからなくなって探すのに苦労したことがよくある ・外からの刺激や雑音で気が散ってしまうことがよくある
いかがでしたでしょうか。【A】が多かった人もいれば【B】が多かった人、どちらも同じ数だったという人もいるかもしれません。
これらのテストは【A】がアスペルガー症候群のチェックリスト、【B】がADHD(注意欠如多動性障害)のチェックリストです。
発達障害は、脳機能の先天的な障害
いま、大人になってから発達障害とわかる人が増えています。
発達障害とは、脳機能の先天的な障害のこと。生まれながらに脳の働きにかたよりがあり、それが様々な特性となって現れるもののことです。
多くの場合は幼少期に診断されますが、最近では、大人になってから、うつ症状や不安症状などの二次的な障害が起きて初めて発達障害とわかるケースが増えてきています。
これまで1万人以上を診てきた、発達障害のスペシャリストであるどんぐり発達クリニックの宮尾益知先生に、発達障害について話を伺いました。
誰でもどちらかの特性を持っている 「最初にやっていただいたチェックリストは、半分以上あてはまると、【A】の場合はアスペルガー症候群、【B】の場合はADHDの疑いがあると言われます。しかし、これまで発達障害とは関係ないと思っていた人でも、意外と多くあてはまって驚いたかもしれません。
発達障害とは、風邪やインフルエンザのように0か100ではなく、グレーゾーンが大きいもので、誰にでも気分の波があるように、生活環境や人間関係などで症状が強く出る場合もあれば、不自由がないまま過ごせる場合もあります。
『あの人は几帳面でいつも趣味に没頭している』とか『あの人は忘れっぽい人だけど、人当たりはいい』などというように、人には個性があります。発達障害とはその個性の波が強すぎるために、周りに迷惑をかけたり、自分ができないことが浮き彫りとなって生きづらさを感じていたり、うまく世の中が渡れずに困っている状態のことをいいます。
人は誰でもどちらかの特性を持っているもの。アスペルガー症候群、ADHDのチェックリストで数が多く当てはまったからといって、現在までの生活で不自由を感じていなければ全く問題はありません」
うつ病で見過ごされているケースも
「しかしながら、自分では頑張っているつもりなのにトラブルやミスが続き、周囲に迷惑をかけてしまっている、いつも同じことで怒られてしまうなどで、うつ症状や不安症状などが出るようになることもあります。
うつ病だと言われたまま治療を続けていたりと、見過ごされている場合も少なくありません。
実際に、患者さんの中でもうつ病の治療をしていたけれどもなかなかよくならないといって様々な精神科を受診し、何年も経ってから私のところへ来て初めて発達障害だとわかったケースもあります。精神科医でも発達障害の診断はとても難しいものなのです」
社会の風当たりが強くなっている 「現在は限られた時間の中で多くの情報をいかに処理できるかが重要となっていて、個人の違いにいちいち対応できるだけの余裕が社会全体でなくなっており、発達障害の人たちに対する風当たりも強くなってきています。
第一次産業が中心だった頃は、病気の認識もまだなかったということもありますが、発達障害は『個性』と捉えられていて、一人ひとりに合わせる余裕がありました。
子どもの頃の話でいえば、近所の柿を盗んだり、隣の子を授業中に蹴飛ばしたりする子は単なる『やんちゃ』な子。近所の怖いおじさんから大目玉を食らっても、それで許されるような環境がありました。しかし今はどうでしょうか。どちらも裁判沙汰、警察を呼ばれてしまうことになります。
社会の構造が変わってきたために、発達障害の人の強い個性やミスなどが目立つようになり、発達障害という言葉がより注目されるようになってきたのだと考えています。
その中でもアスペルガー症候群とADHDは、大人になってから発見されるケースが少なくない発達障害ですが、特に診断は受けていないけれども自分で『発達障害かも』と感じている場合や、診断は受けていない上に自分自身でも全く自覚がない場合が『大人の発達障害』という言葉で問題となっています」
参照元 : 文春オンライン
■発達障害とは?
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達のかたよりによる障害です。
その症状は外見から分かりにくく、周囲とのミスマッチから社会生活に困難が発生することがあります。
発達障害の特性を「自分勝手」「わがまま」「困った子」などと捉えられてしまい、「親の育て方が悪い」「怠けている」と批判されてしまうことも少なくありません。
得意・不得意ゆえの困難さは、特性に合わせた方法で関わり教育をしていくことで、周囲がその子の個性・能力・希望などを理解した上で、その子に合ったサポートをしていくことが大切です。
■発達障害の3つのタイプとグレーゾーン
発達障害の3つのタイプと特性
①自閉症スペクトラム(ASD)
対人関係・社会性とコミュニケーション能力に困難があり、興味や関心の幅が狭く
物事に強いこだわりがあり、柔軟な思考や変化への対処が難しい人もいます。
②ADHA(注意欠陥・多動性障害)
「気が散りやすい」「集中力がない」「忘れっぽい」「落ち着きがない」「思いつきで行動してしまう」など年齢に見合わない不注意、多動性、衝動性によって学業や日常生活に支障が出てしまいます。
感情や行動のコントロールをするのが自分では難しいため、周囲から批難を受けてしまいがちです。
③学習障害(LD)
知的発達に遅れは大きくないはずが、読む・書く・話す・聞く・計算など特定の行動が困難になることが見受けられます。
読めるけれど書くことが苦手、算数など特定の科目が理解できないなど偏りが見られることが多いです。
発達障害の併存と症状
上記の3つのタイプから、自閉症スペクトラムとADHDに、知的障害を併存している子もいます。
たとえば、光や音、触り心地に敏感だったり、逆に痛みや五感の刺激反応が鈍い子も多いと言われています。
ほかにも、言葉の遅れや運動障害、てんかん、チックなどの併存が多い子もいます。
発達障害のグレーゾーン
「グレーゾーン」とは、発達障害の特性があっても診断基準に満たない症状を示す通称です。発達障害は数値のような基準がないため、見極めしづらい症状もあります。
診断基準を満たすケースよりも困難なことは少ないと思われがちですが、日常や社会生活においては、理解やサポートが得られにくいなど、グレーゾーンならではの困難もあると言われています。
発達障害の原因とは?
発達障害の原因は、はっきりとはわかっていません。
障害や個人によっても異なりますが、現在では、先天的な脳の機能障害によって発達や認知に偏りがあるという説が有力とされています。
脳の機能障害を引き起こすメカニズムやその要因も解明されていません。
しかし、「親の愛情不足」や「親のしつけが悪い」といった心的要因論は医学的に否定されています。
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達のかたよりによる障害です。
その症状は外見から分かりにくく、周囲とのミスマッチから社会生活に困難が発生することがあります。
発達障害の特性を「自分勝手」「わがまま」「困った子」などと捉えられてしまい、「親の育て方が悪い」「怠けている」と批判されてしまうことも少なくありません。
得意・不得意ゆえの困難さは、特性に合わせた方法で関わり教育をしていくことで、周囲がその子の個性・能力・希望などを理解した上で、その子に合ったサポートをしていくことが大切です。
■発達障害の3つのタイプとグレーゾーン
発達障害の3つのタイプと特性
①自閉症スペクトラム(ASD)
対人関係・社会性とコミュニケーション能力に困難があり、興味や関心の幅が狭く
物事に強いこだわりがあり、柔軟な思考や変化への対処が難しい人もいます。
②ADHA(注意欠陥・多動性障害)
「気が散りやすい」「集中力がない」「忘れっぽい」「落ち着きがない」「思いつきで行動してしまう」など年齢に見合わない不注意、多動性、衝動性によって学業や日常生活に支障が出てしまいます。
感情や行動のコントロールをするのが自分では難しいため、周囲から批難を受けてしまいがちです。
③学習障害(LD)
知的発達に遅れは大きくないはずが、読む・書く・話す・聞く・計算など特定の行動が困難になることが見受けられます。
読めるけれど書くことが苦手、算数など特定の科目が理解できないなど偏りが見られることが多いです。
発達障害の併存と症状
上記の3つのタイプから、自閉症スペクトラムとADHDに、知的障害を併存している子もいます。
たとえば、光や音、触り心地に敏感だったり、逆に痛みや五感の刺激反応が鈍い子も多いと言われています。
ほかにも、言葉の遅れや運動障害、てんかん、チックなどの併存が多い子もいます。
発達障害のグレーゾーン
「グレーゾーン」とは、発達障害の特性があっても診断基準に満たない症状を示す通称です。発達障害は数値のような基準がないため、見極めしづらい症状もあります。
診断基準を満たすケースよりも困難なことは少ないと思われがちですが、日常や社会生活においては、理解やサポートが得られにくいなど、グレーゾーンならではの困難もあると言われています。
発達障害の原因とは?
発達障害の原因は、はっきりとはわかっていません。
障害や個人によっても異なりますが、現在では、先天的な脳の機能障害によって発達や認知に偏りがあるという説が有力とされています。
脳の機能障害を引き起こすメカニズムやその要因も解明されていません。
しかし、「親の愛情不足」や「親のしつけが悪い」といった心的要因論は医学的に否定されています。
▼大人の発達障害と生きる とくダネ 2017年 12月21日
▼「発達障害ADHD・アスペルガー症候群」ザ!世界仰天ニュース