がん細胞だけを数分で破壊!「光免疫療法」異例のスピードで実用化も
2018年9月21日 金曜 午後6:00
アメリカ大統領も誇った治療法は、日本人が開発!
樹木希林さんや、山本“KID”徳郁さん、さくらももこさん…今年も多くの方が、がんで亡くなられました。
全身がんで亡くなった樹木希林さん
国民の2人に1人が罹患する病、がん。しかし、着実に進んでいる革新的な治療法の研究があります。
“光線”を使って、がん細胞をピンポイントで確実に攻撃する「光免疫療法」です。
オバマ前大統領が、2012年の一般教書演説で「がん細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と世界に誇ったように、これまではアメリカで研究が進められてきました。そして遂に、国内での治験が、国立がん研究センター東病院で始まりました。実は、世界が注目する、その研究を主導しているのは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の日本人研究者、小林久隆主任研究員なのです。
15人のうち、14人のがん縮小 7人は消失!
2015年に始まったアメリカでの治験では、目覚ましい結果が出ています。
学会等で報告された結果では、1回だけ「光免疫療法」で治療した8人のうち、7人のがんが縮小し、そのうち3人はがんが消えました。
最大4回の治療を受けた7人では、全員のがんが縮小し、4人のがんが消えました。
つまり15人の患者のうち14人のがんが縮小し、そのうち7人のがんが消えたことになります。
アメリカでは、既に第2相までの治験が終わっています。
さらに、日本を含む早期承認制度に即した国際共通第3相試験も準備が進んでいます。
がんの『3大治療』と呼ばれる、手術・放射線・抗がん剤は、いずれも患者さんに副作用や大きな負担を強います。
しかし、「光免疫療法」は、これまでの治療法と大きな違いがあります。
私は昨年、ワシントンで小林氏に詳しくお話を伺ってきました。
「放射線でも化学療法でも、これ以上は人間の体が耐えられないという限界があります。しかし、光免疫療法には抗体の投与量限界も、照射量の限界もありません。がんが再発しても、何度でも治り切るまで出来る治療なのです」(小林氏)
がん細胞だけが風船のように破裂する!
「光免疫療法」では、「近赤外線」という光を使ってがん細胞を破壊します。
「近赤外線」とは、TVのリモコンや赤外線通信などに用いられている無害な光線です。
もう1つのポイントが、がん細胞だけに特異的に結合する抗体です。
その抗体に、IR700という色素(これを発見するまでが大変だったそうです)を一体化します。
具体的な治療法ですが、まずIR700と一体となった抗体を、静脈注射で体内に入れます。
1~2日すると、当然ながら、抗体は多くのがん細胞と結合します。
続いて、結合した抗体に「近赤外線」の光を照射します。
抗体と一体化したIR700は、「近赤外線」を受けると化学反応を起こすのです。
「IR700の化学反応で、がん細胞の細胞膜が壊れて膨らんでくる。膨らみ過ぎると破れて、がん細胞が破壊されます。」(小林氏)
化学反応で変化したIR700は、がん細胞の膜にあるたんぱく質を変性させ、細胞膜の機能を失わせます。すると1~2分という極めて短時間で、がん細胞は膨張~破壊されるのです。
それは、膨らみ過ぎた風船が破裂する様子に似ています。
皮膚がんのような身体の表面に近いものだけでなく、体の奥の方にがんがある場合も、注射針を通して細い光ファイバーを患部に挿し込めば、近赤外線を照射出来ます。
「光ファイバーを使うことで、食道がん、肺がん、子宮がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、腎臓がんなど、がんの8~9割はこの治療法でカバー出来ると考えています」(小林氏)
転移したがんには、治療法をアレンジして適用
がん患者さんの大きな不安は、がんが転移すること。
転移したがんの場合、現状では治療法が限定され、さらに困難を伴います。
がんは、なぜ増殖し、転移していくのでしょうか。
本来、もともと持っている免疫細胞が機能していれば、がん細胞は免疫細胞が攻撃することで排除されます。
しかし実際は、免疫細胞の働きを阻害する「制御性T細胞」という細胞を、がん細胞が周囲に集めて、免疫細胞を眠らせるのです。
免疫細胞からの攻撃がなくなるので、がん細胞はどんどん増殖していくのです。
「光免疫療法」では、がんが転移している場合は、IR700を付けた抗体を「制御性T細胞」に結合させるのが有効だとわかりました。
つまり、今度は「近赤外線」で、免疫細胞の邪魔をしている「制御性T細胞」を破壊するのです。
すると、免疫細胞は“邪魔者”がいなくなるので「眠り」から覚め、数十分のうちに活性化、がん細胞を攻撃・破壊します。
活性化した免疫細胞は、さらに血流に乗って全身を巡り、わずか数時間のうちに転移がんをも攻撃し始めるのです。
「がんが出来た局所の免疫を上げてあげれば、ステージ4という段階でも、転移したがんでも治療が望めます。末期がんでも、可能性としては十分あります」(小林氏)
入院も不要で、費用は大きく低減
しかも、この治療のために入院する必要はないということです。
治療としては、初日に抗体を注射、翌日に近赤外線を照射する、それで全てだからです。
また現在のところ、臨床治験上では特に副作用というのは見られていません。
「正常細胞は傷つけないで、がん細胞だけを破壊するからでしょう」(小林氏)
最近の新たながん治療は、治療費の高騰が問題になっています。
「光免疫療法」はどうでしょうか。
一番費用がかかるのは、IR700を付けた抗体ですが、通常の抗体治療の数十分の1程度の量しか使わないので、それほどの高額にはならない見込みです。
また、近赤外光を照射するレーザー装置は、放射線治療装置のように高価ではありません。
しかも、入院も必要ないのです。
従来のがん治療法に比して、費用をかなり低減させられることが期待できます。
「光免疫療法」が普及すれば、医療費の増加に悩む国の財政にとっても、大きなメリットになるでしょう。
三木谷氏のサポート受け、異例のスピードで実用化目指す
基礎的な動物実験の論文発表(2011年)からわずか4年後という、異例の速さで治験が進み、今年3月からは日本での治験も始まりました。
このスピーディーな展開には、楽天会長の三木谷氏のサポートが大きく寄与しています。
アメリカ国立衛生研究所が治験を委託したベンチャー企業は、三木谷氏が取締役会長を務めています。
自身の父親もがんで亡くした三木谷氏は、「光免疫療法」の普及に大きな意欲を持ち、早期承認制度の適応を受けて、できる限り早期の承認を目指しているということです。
国際共通治験を行うことで、日本での実用化も、アメリカにほぼ遅れることなく進むことと思われます。
一日も早く、多くのがん患者さんを救ってくれることを願います。
千春皮フ科クリニック 院長
渡邊千春(医学博士)
参照元 : fnn prime
▼光免疫療法 治験についてのお知らせ - 国立がん研究センター
2018年9月21日 金曜 午後6:00
アメリカ大統領も誇った治療法は、日本人が開発!
樹木希林さんや、山本“KID”徳郁さん、さくらももこさん…今年も多くの方が、がんで亡くなられました。
全身がんで亡くなった樹木希林さん
国民の2人に1人が罹患する病、がん。しかし、着実に進んでいる革新的な治療法の研究があります。
“光線”を使って、がん細胞をピンポイントで確実に攻撃する「光免疫療法」です。
オバマ前大統領が、2012年の一般教書演説で「がん細胞だけを殺す新しい治療法が実現しそうだ」と世界に誇ったように、これまではアメリカで研究が進められてきました。そして遂に、国内での治験が、国立がん研究センター東病院で始まりました。実は、世界が注目する、その研究を主導しているのは、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の日本人研究者、小林久隆主任研究員なのです。
15人のうち、14人のがん縮小 7人は消失!
2015年に始まったアメリカでの治験では、目覚ましい結果が出ています。
学会等で報告された結果では、1回だけ「光免疫療法」で治療した8人のうち、7人のがんが縮小し、そのうち3人はがんが消えました。
最大4回の治療を受けた7人では、全員のがんが縮小し、4人のがんが消えました。
つまり15人の患者のうち14人のがんが縮小し、そのうち7人のがんが消えたことになります。
アメリカでは、既に第2相までの治験が終わっています。
さらに、日本を含む早期承認制度に即した国際共通第3相試験も準備が進んでいます。
がんの『3大治療』と呼ばれる、手術・放射線・抗がん剤は、いずれも患者さんに副作用や大きな負担を強います。
しかし、「光免疫療法」は、これまでの治療法と大きな違いがあります。
私は昨年、ワシントンで小林氏に詳しくお話を伺ってきました。
「放射線でも化学療法でも、これ以上は人間の体が耐えられないという限界があります。しかし、光免疫療法には抗体の投与量限界も、照射量の限界もありません。がんが再発しても、何度でも治り切るまで出来る治療なのです」(小林氏)
がん細胞だけが風船のように破裂する!
「光免疫療法」では、「近赤外線」という光を使ってがん細胞を破壊します。
「近赤外線」とは、TVのリモコンや赤外線通信などに用いられている無害な光線です。
もう1つのポイントが、がん細胞だけに特異的に結合する抗体です。
その抗体に、IR700という色素(これを発見するまでが大変だったそうです)を一体化します。
具体的な治療法ですが、まずIR700と一体となった抗体を、静脈注射で体内に入れます。
1~2日すると、当然ながら、抗体は多くのがん細胞と結合します。
続いて、結合した抗体に「近赤外線」の光を照射します。
抗体と一体化したIR700は、「近赤外線」を受けると化学反応を起こすのです。
「IR700の化学反応で、がん細胞の細胞膜が壊れて膨らんでくる。膨らみ過ぎると破れて、がん細胞が破壊されます。」(小林氏)
化学反応で変化したIR700は、がん細胞の膜にあるたんぱく質を変性させ、細胞膜の機能を失わせます。すると1~2分という極めて短時間で、がん細胞は膨張~破壊されるのです。
それは、膨らみ過ぎた風船が破裂する様子に似ています。
皮膚がんのような身体の表面に近いものだけでなく、体の奥の方にがんがある場合も、注射針を通して細い光ファイバーを患部に挿し込めば、近赤外線を照射出来ます。
「光ファイバーを使うことで、食道がん、肺がん、子宮がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、腎臓がんなど、がんの8~9割はこの治療法でカバー出来ると考えています」(小林氏)
転移したがんには、治療法をアレンジして適用
がん患者さんの大きな不安は、がんが転移すること。
転移したがんの場合、現状では治療法が限定され、さらに困難を伴います。
がんは、なぜ増殖し、転移していくのでしょうか。
本来、もともと持っている免疫細胞が機能していれば、がん細胞は免疫細胞が攻撃することで排除されます。
しかし実際は、免疫細胞の働きを阻害する「制御性T細胞」という細胞を、がん細胞が周囲に集めて、免疫細胞を眠らせるのです。
免疫細胞からの攻撃がなくなるので、がん細胞はどんどん増殖していくのです。
「光免疫療法」では、がんが転移している場合は、IR700を付けた抗体を「制御性T細胞」に結合させるのが有効だとわかりました。
つまり、今度は「近赤外線」で、免疫細胞の邪魔をしている「制御性T細胞」を破壊するのです。
すると、免疫細胞は“邪魔者”がいなくなるので「眠り」から覚め、数十分のうちに活性化、がん細胞を攻撃・破壊します。
活性化した免疫細胞は、さらに血流に乗って全身を巡り、わずか数時間のうちに転移がんをも攻撃し始めるのです。
「がんが出来た局所の免疫を上げてあげれば、ステージ4という段階でも、転移したがんでも治療が望めます。末期がんでも、可能性としては十分あります」(小林氏)
入院も不要で、費用は大きく低減
しかも、この治療のために入院する必要はないということです。
治療としては、初日に抗体を注射、翌日に近赤外線を照射する、それで全てだからです。
また現在のところ、臨床治験上では特に副作用というのは見られていません。
「正常細胞は傷つけないで、がん細胞だけを破壊するからでしょう」(小林氏)
最近の新たながん治療は、治療費の高騰が問題になっています。
「光免疫療法」はどうでしょうか。
一番費用がかかるのは、IR700を付けた抗体ですが、通常の抗体治療の数十分の1程度の量しか使わないので、それほどの高額にはならない見込みです。
また、近赤外光を照射するレーザー装置は、放射線治療装置のように高価ではありません。
しかも、入院も必要ないのです。
従来のがん治療法に比して、費用をかなり低減させられることが期待できます。
「光免疫療法」が普及すれば、医療費の増加に悩む国の財政にとっても、大きなメリットになるでしょう。
三木谷氏のサポート受け、異例のスピードで実用化目指す
基礎的な動物実験の論文発表(2011年)からわずか4年後という、異例の速さで治験が進み、今年3月からは日本での治験も始まりました。
このスピーディーな展開には、楽天会長の三木谷氏のサポートが大きく寄与しています。
アメリカ国立衛生研究所が治験を委託したベンチャー企業は、三木谷氏が取締役会長を務めています。
自身の父親もがんで亡くした三木谷氏は、「光免疫療法」の普及に大きな意欲を持ち、早期承認制度の適応を受けて、できる限り早期の承認を目指しているということです。
国際共通治験を行うことで、日本での実用化も、アメリカにほぼ遅れることなく進むことと思われます。
一日も早く、多くのがん患者さんを救ってくれることを願います。
千春皮フ科クリニック 院長
渡邊千春(医学博士)
参照元 : fnn prime
▼光免疫療法 治験についてのお知らせ - 国立がん研究センター
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