2017年9月21日木曜日

MMRワクチン接種後の健康被害 国が否定したワクチン接種と熱性けいれんの因果関係を認め、国の不支給処分を一部取り消す裁決

MMRワクチン 27年前の接種被害救済 国の不支給一部取り消し 栃木県

2017年9月16日



はしかやおたふくかぜ、風疹の新3種混合(MMR)ワクチンの接種後に健康被害が出たとして、予防接種法に基づく救済を訴えていた宇都宮市の女性(29)に対し、栃木県は15日までに、国が否定したワクチン接種と熱性けいれんの因果関係を認め、国の不支給処分を一部取り消す裁決を出した。女性は1990年にワクチンを接種していたが、救済制度の存在を知らず手続きが遅れた。20年以上前の被害が認定されたのは極めて異例だ。【野口麗子】

今後、厚生労働省は審査をやり直し、医療費や医療手当の支給が認められる公算が大きい。同省によると、一度否定された健康被害が認められた事例は10例あるという。

裁決などによると、女性は1歳9カ月で接種後、1週間から10日後に発熱があり、熱性けいれんと診断され、その後、てんかんや知的障害の症状も認められた。県は発熱の時期が副反応として想定される1週間から10日以内で、けいれんも起こした点を重視し、因果関係を認めた。

女性らが救済制度を知り、2010年に始まった今回の救済手続きでは、国はカルテがないことなどから審査対象としなかったが、不服申立先となった県は一転、20年以上前の事案で、事実関係を証明する文書を提出できないことなどから、母親(57)の意見陳述などを基に審査した。

一方、てんかんと知的障害については、ワクチン接種後に脳に何らかの障害がないため、関連を否定した。

母親は「一部でも認められて良かったが、被害救済を申請するのが遅かったのが悔やまれる。年月がたって心が折れそうになることもあった」と話した。

MMRワクチンは89年から定期接種が始まったが、髄膜炎などの副作用報告が多発。同年中に国は希望者だけに接種する方針に切り替えたが、母親によると、90年の接種の際に医師から副作用についての説明はなかったという。同ワクチンの接種は93年以降は中止されている。

■解説

周知不足、申請に遅れ
予防接種で生じた健康被害の認定が27年もかかった最大の原因は、救済制度に関する説明と周知の不足だ。

被害者の母親は1990年に娘がMMRワクチン接種を受けた時、副作用の危険の説明を受けた記憶がない。3年後に同ワクチンが髄膜炎などの多発で接種中止となった際も、母は「(因果関係に)確信を持ったが、訴える方法が分からなかった」と証言する。実際に救済を申し立てたのは母が制度を知ったその17年後だが、適切な情報提供があれば、もっと早く手続きできただろう。

空白期間の長さが被害者に不利に働いた面もある。今回、因果関係が認められた熱性けいれんについては、申立時に既にカルテが廃棄されており、国の審査会では無視された形になった。

被害者側に落ち度のない書類の欠損には、家族からの聞き取り、鑑定人への照会などによる柔軟な事実認定も必要なことを今回の裁決は示す。

医療の進歩で予防できる感染症も増え、ワクチンへの期待は高まっている。膨大な人に使われるワクチンに一定割合の副作用被害が出るのは避けられないが、健康を害してしまった人にはメーカーや行政の責任の有無を問わず速やかに補償するというのが救済制度の趣旨だ。国民の安心確保のための仕組みであることを踏まえた運用の改善が国や自治体に求められる。【清水健二】

■ことば

予防接種健康被害救済制度
ワクチンの定期接種で副作用などの被害が出た場合、国が治療費や障害年金などを補償する仕組み。市町村に申請し、厚生労働省の審査会が因果関係を認定すれば給付が受けられる。不支給決定などには、都道府県への不服申し立て(審査請求)ができる。1977年の現制度開始から2014年までの被害認定者数は2982人。任意接種やワクチン以外の医薬品による副作用被害には別の救済制度がある。

参照元 : 毎日新聞





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