2015年8月24日月曜日

子どもの頃に手術で全身麻酔をかけると、その後の認知機能と脳構造に影響及ぼす可能性あり

子どもの全身麻酔、その後の知能に影響か? 聞き取り、理解力、知能の検査結果に差

2015年8月22日 12:00 AM



子どものときの手術のために全身麻酔をかけると、その後の認知機能と脳構造に影響している可能性があるようだ。

米国シンシナティ小児病院医療センターを中心とした研究グループが、小児科分野の専門誌であるペディアトリクス誌2015年7月号で報告した。

成長後の懸念

未成熟な動物に麻酔薬を使用すると、広範囲に及ぶ細胞死、神経細胞(ニューロン)の欠落、認知能力の障害を引き起こすと知られている。

人の幼児においても麻酔の使用は同様の影響が及ぶのではないかという懸念が存在している。

これまでの調査では、この懸念を十分対応できておらず、また脳の構造解析もされていなかった。

研究グループは、幼児期の麻酔使用の影響を探るために、5歳から18歳までの、4歳になる前に麻酔下で外科手術を受けていた53人に対して、聞き取り、理解力、知能を検査して、これまでに麻酔下で手術を受けていない53人と比較した。脳構造の比較はMRIスキャンと用いて実施した。

学習成績や脳にも影響を及ぼす

結果として、麻酔を受けていた人では受けていない人と比較すると、テストの成績が低かった。知能成績と言語理解能力の低下も見られた。

MRIの調査では、過去に動物で認められたような脳で神経細胞が集まる「灰白質」の領域全体に及ぶ大幅な減少は起きていなかった。ただし、脳の後ろ側に当たる「後頭葉皮質」と「小脳」と呼ばれる領域において、灰白質の密度には低下が見られた。

今回の結果より、幼児期の外科手術などで行われる全身麻酔は、認知機能だけでなく脳構造にも変動をもたらす可能性が示された。原因となるメカニズムの解明と、どうすれば軽減されるのかについて、さらなる研究が必要と研究グループは指摘している。

文献情報

Backeljauw B et al. Cognition and Brain Structure Following Early Childhood Surgery With Anesthesia. Pediatrics. 2015;136:e1-e12.

Molecular markers for colorectal cancer screening.

参照元 : medエッジ


しかし、全身麻酔が必要なほどの大病を無視すれば、子どもが死んでしまうので、背に腹は代えられないという事情もあるので、全身麻酔をしないで手術を行うのは無理かも・・・微妙な選択である。

麻酔の危険性

重大な危険性
近年、安全な麻酔方法や有益な患者監視装置が多数開発され、麻酔の安全性は確立されてきました。しかし、麻酔は絶対安全であるとは言い切れません。2000年の日本麻酔科学会の統計では、日本国内において10万例に1例の割合で、麻酔が原因で死亡しています。当院では、年間約4500例の麻酔管理を行っていますが、最近の7年間では麻酔が原因で死亡した症例は一例もありません。

麻酔の合併症について
麻酔法とそれに伴う合併症を以下に列記いたします。

(a)すべての麻酔法によって生じる合併症
・薬剤に対する異常反応
・肝・腎機能障害
・気道閉塞、喘息発作、誤嚥性肺炎、無気肺、気胸、肺水腫、肺血栓塞栓症などの肺機能障害
・血圧の低下や上昇、心拍数の減少や増加、不整脈、狭心症、心筋梗塞、心不全、心停止などの循環器の障害
・悪心・嘔吐、消化管の運動異常(しゃっくり、腸閉塞など)
・末梢神経障害、脱毛症、意識障害(脳梗塞、脳出血など)、痙攣、せん妄   などの神経系の障害
・静脈血栓症・肺血栓塞栓症
・発熱(体温上昇)、ふるえ(体温低下)、悪性高熱症 
・輸血に対する異常反応など

(b)全身麻酔によって生じる合併症
・喉の痛み・違和感、嗄声(声のかれ)、喉頭痙攣、気管支痙攣
・歯の損傷
・声帯肉芽腫・反回神経麻痺など声帯の障害など

(c)脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔によって生じる合併症
・血圧低下、心拍数の異常、不整脈、息苦しさ
・頭痛、尿閉(膀胱内の尿の貯留)   
・一過性神経症状、馬尾症候群、硬膜外血腫・膿瘍、クモ膜下血腫、髄膜炎、脊髄損傷、局所麻酔薬中毒、硬膜外カテーテル遺残など

(d)血管確保(点滴など)によって生じる合併症
・ 血管外への漏れ、血管炎、血腫(皮下出血)、感染
・ 腱や靱帯の損傷、末梢神経障害、空気塞栓など

全身麻酔の合併症
比較的頻度の高い合併症として、手術後の悪心嘔吐があります。全身麻酔後の患者様の約20%に発生します。気管の中へチューブを留置するため、麻酔後に喉の違和感を訴える患者様もいらっしゃいますが、多くは2~3日で消失します。また、手術中患者様は長時間動けないために、手術後に腰痛や背中の痛みを生じたり、手術のために特殊な体位を必要とする場合に手術台の支柱などで末梢神経が圧迫されてしびれが残ることもあります。

麻酔合併症として比較的多く見られるものに歯の損傷があります。気管の中にチューブを留置することは、全身麻酔を行う際には必要な行為ですが、その際に弱くなっている歯があると折れることがあります。麻酔科医は麻酔前に歯に関することを十分確認させていただき、弱い歯がある場合にはできる限り無理をしないで気管内にチューブを入れますが、それでも折れることがあります。その際にはお許しください。

今までに特にご病気にかかられたことがなくても、手術中に投与される麻酔薬などに対して、体質的に異常な反応を示す方がいられます。これまでに使用した薬や歯科や手術時の麻酔などで、気分が悪くなったりじんましんが出たことのある方はアレルギー反応を起こす可能性が高いと考えられますので事前にお知らせ下さい。

麻酔中に発生するもので、きわめて稀ですが(数万例に1例)に「悪性高熱症」というものがあります。「悪性高熱症」は、一部の麻酔薬と筋弛緩薬が誘因となって異常高熱と筋肉の硬直を生じ、死に至ることもある重篤な合併症です。しかし、最近は治療法が確立され、救命率は高まってきました。この病気は特定の家族に発生することがありますので、血縁者の中に全身麻酔中に異常な高熱をきたした方がいらした場合には必ずお知らせください。

脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔の合併症
これらの麻酔法を行った場合には、麻酔中に血圧が下がることがあります。その際には、患者さんはあくびをしたり、吐き気を伴うことがありますが、麻酔科医が迅速に対処いたしますので、大丈夫です。

麻酔後に生じる比較的頻度の高い合併症は頭痛です。発症しても多くの場合、安静にしていると1週間以内に治ります。我慢できない頭痛が続く場合には、麻酔科にて治療をいたします。また、神経の近くに注射するため、針が神経に触れて、麻酔後でも足のしびれが続いたり痛みが残ることが非常に稀ですが、報告されています。

また稀な合併症として、脊髄くも膜下麻酔や硬膜外麻酔を行った部位の感染や血腫(血のかたまり)ができることがあり、これによって脊髄の神経を圧迫して足に麻痺をきたすことがあります。麻酔薬の効果が明らかに消失した後も足のしびれや麻痺がある場合は、遠慮することなくすみやかにご連絡ください。

患者様のご病気と麻酔について
手術する原因となった病気以外にも何らかの病気がある場合は、麻酔を行う上で重大な影響を及ぼすものが含まれている可能性があります。したがって、手術に関係がない病気と思われてもお話しください。麻酔科医による術前訪問の際に、合併している病気や以前にかかったことのある病気についても質問致しますので、全てお知らせ下さい。

(a)呼吸器疾患
かぜ、気管支炎、肺炎、肺気腫、気管支喘息(ぜんそく)、肺結核、呼吸不全(慢性の呼吸器疾患)、肺の手術後など

(b)循環器疾患
高血圧、心筋虚血(狭心症、心筋梗塞)、心臓弁膜症、先天性心疾患、不整脈、心筋症、ペースメーカー使用など

(c)神経筋疾患
頭痛、めまい、一時的な意識消失、脳出血、脳梗塞、筋ジストロフィや筋無力症などの神経筋疾患、精神科疾患(向精神薬の長期使用)など

(d)その他
肥満、長期喫煙、糖尿病、ホルモン異常(甲状腺・副腎・下垂体などの病気)、先天性代謝異常、肝臓病、腎臓病、腎不全、貧血、血が止まりにくい、緑内障、リウマチ、膠原病、静脈血栓症や肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群など)、アレルギー(薬物、食物など)、皮膚の過敏症など

参照元 : 昭和大学病院

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