不平不満を言いまくると「脳が物理的に変わる」と科学的に判明! 愚痴を言うだけで「深刻なリスク」
2020.01.26
日々の仕事と生活の中では気が重くなる案件もあるだろう。思わず不平不満が口をついて出てしまうのも無理はないが、何度も言い続けていれば、そのうち“ネガティブ脳”に変化して幸せからどんどん遠ざかってしまうことが各種の研究で報告されている。
■不平不満を言い続けると“ネガティブ脳”に
大人になれば身長の伸びは止まり、身体はゆっくりと老化のプロセスへと突入していくわけだが、人生の後半戦になってもトレーニング次第でいかようにも開発できるのが脳だ。
脳の持つ変幻自在な可変性は神経可塑性(neuroplasticity)と呼ばれ、新しい神経回路がつながるようにシナプスを変化させることができる脳の能力を意味する。これにより、古い習慣を捨て去り、新しい習慣を獲得し、新たなスキルを学び、成長し、変化し、人間として本質的に“進化”することができるのだ。
脳の神経可塑性によってどんなことが可能になるのか、例えば以下のような好ましい変化を遂げることができる。
●知能の向上
●人生を変え得る新たなスキルの習得
●特定の脳損傷からの回復
●心の知能指数(EQ)の向上
●悪癖とネガティブ思考の除去
この神経可塑性によって脳はいかようにも作り変えられるのだが、この特性は諸刃の剣でもある。能力開発などポジティブな方向に変化させることもできれば、常に不平不満に苛まれる“ネガティブ脳”が形成されてしまう場合もあるのだ。
神経科学者で作家のアレックス・コーブ氏によれば、うつ病は脳の神経可塑性によって引き起こされていると説明している。
「うつ病といっても、脳自体には根本的な問題はありません。単に神経回路の特定の調整が、うつ病のパターンに向かう傾向を生み出しているということです。このパターンは脳がストレス、計画、習慣、意思決定、その他多くのことを扱う方法に関係しています。それらすべての回路の動的な相互作用です。そしてパターンが形成され始めると、脳全体に数十の小さな変化を引き起こし、ネガティブな負のスパイラルに陥ります」(アレックス・コーブ氏)
つまり形成された“ネガティブ脳”はさらにネガティブな方向へ“強化”されていき、うつ病などの精神疾患を発症することになる。すぐにネガティブな考えが思い浮かぶことはもちろん、ネガティブな現象に敏感になり身の回りの“悪い知らせ”ばかりに気がついてネガティブなスパイラルに陥っていくのだ。
普段から何気なく不平不満や悪態を口にしていると、このようにきわめて深刻なリスクに晒されることになるのである。
■“ネガティブ脳”を“ポジティブ脳”に作り変えるには
ではどうすればよいのか。安心していいのは脳の神経可塑性によって“ネガティブ脳”もまた作り変えられることにある。
“ネガティブ脳”をニュートラルな脳に作り変え、さらに“ポジティブ脳”にするにはどうすればよいのか。オルタナティブ系メディア「Collective Evolution」の記事によれば、まず最初のステップとして自分が普段どのくらい不平不満を口にしたり感じたりしているのかを自覚することから始まるということだ。この自覚なしに、染みついたネガティブ思考を取り除くことはできないという。
しかし長年の習慣からある種無意識的に不平不満を口にし、ネガティブ思考をめぐらせているケースもあるだろう。特に勤務時間中などは自分で自分のネガティブさを自覚するのは困難なことかもしれない。
そこで“不平不満リストバンド”というアイディアが登場している。
このリストバンドは米ミズーリ州カンザスシティの牧師が始めてその後世界的なムーブメントとなった「不平撲滅運動(No Complaints Campaign)」で使われるもので、「不平不満を言わない(No Complaints)」という文言などがプリントされた緩いリストバンドを普段から手首にはめておき、自分が不平不満を口にしたりネガティブな考えが浮かんだことを自覚した時、このリストバンドを外してもう一方の手に付け替えることを課すのである。
このリストバンドをつけることで日常生活の中でいかに不平不満を口にしているのかが自覚できる。家族、友人、同僚にこの運動へのチャレンジを知らせておくことも重要で、自分で気づかなかった何気ない不平不満を周囲から指摘してもらうことができる。そして目指すゴールはこのリストバンドを付け替える必要がなくなった一日がやって来ることであり、さらに一定期間バンドを付け替えなかった日が続くことである。
ではこうして自分のネガティブさを自覚した次には何をしたらよいのだろうか。
米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の心理学者、バーバラ・フレデリックソン教授は、ニュートラルになった脳を“ポジティブ脳”へと作り変える手段としてマインドフルネス瞑想を推奨している。
フレデリックソン教授の研究チームが3カ月を費やした研究で、毎日瞑想する人はそうでない人よりもポジティブな感情や高揚感を多く感じていることを突き止めている。
「毎日瞑想をしている人は、精神的充実、人生の目的、社会的支援を見いだし、病気の症状を改善し続けています」(フレデリックソン教授)
マインドフルネス瞑想について、わかりやすく解説されているウェブサイトやブログ、動画などは最近ではいくつもある。そうしたリソースを活用し1日15分から20分の瞑想を続けることで脳を作り変え、人生全体をも好転させることができるということだ。気になる向きは試してみてもよいのだろう。
参考:「Collective Evolution」、ほか
参照元 : TOCANA
2020.01.26
日々の仕事と生活の中では気が重くなる案件もあるだろう。思わず不平不満が口をついて出てしまうのも無理はないが、何度も言い続けていれば、そのうち“ネガティブ脳”に変化して幸せからどんどん遠ざかってしまうことが各種の研究で報告されている。
■不平不満を言い続けると“ネガティブ脳”に
大人になれば身長の伸びは止まり、身体はゆっくりと老化のプロセスへと突入していくわけだが、人生の後半戦になってもトレーニング次第でいかようにも開発できるのが脳だ。
脳の持つ変幻自在な可変性は神経可塑性(neuroplasticity)と呼ばれ、新しい神経回路がつながるようにシナプスを変化させることができる脳の能力を意味する。これにより、古い習慣を捨て去り、新しい習慣を獲得し、新たなスキルを学び、成長し、変化し、人間として本質的に“進化”することができるのだ。
脳の神経可塑性によってどんなことが可能になるのか、例えば以下のような好ましい変化を遂げることができる。
●知能の向上
●人生を変え得る新たなスキルの習得
●特定の脳損傷からの回復
●心の知能指数(EQ)の向上
●悪癖とネガティブ思考の除去
この神経可塑性によって脳はいかようにも作り変えられるのだが、この特性は諸刃の剣でもある。能力開発などポジティブな方向に変化させることもできれば、常に不平不満に苛まれる“ネガティブ脳”が形成されてしまう場合もあるのだ。
神経科学者で作家のアレックス・コーブ氏によれば、うつ病は脳の神経可塑性によって引き起こされていると説明している。
「うつ病といっても、脳自体には根本的な問題はありません。単に神経回路の特定の調整が、うつ病のパターンに向かう傾向を生み出しているということです。このパターンは脳がストレス、計画、習慣、意思決定、その他多くのことを扱う方法に関係しています。それらすべての回路の動的な相互作用です。そしてパターンが形成され始めると、脳全体に数十の小さな変化を引き起こし、ネガティブな負のスパイラルに陥ります」(アレックス・コーブ氏)
つまり形成された“ネガティブ脳”はさらにネガティブな方向へ“強化”されていき、うつ病などの精神疾患を発症することになる。すぐにネガティブな考えが思い浮かぶことはもちろん、ネガティブな現象に敏感になり身の回りの“悪い知らせ”ばかりに気がついてネガティブなスパイラルに陥っていくのだ。
普段から何気なく不平不満や悪態を口にしていると、このようにきわめて深刻なリスクに晒されることになるのである。
■“ネガティブ脳”を“ポジティブ脳”に作り変えるには
ではどうすればよいのか。安心していいのは脳の神経可塑性によって“ネガティブ脳”もまた作り変えられることにある。
“ネガティブ脳”をニュートラルな脳に作り変え、さらに“ポジティブ脳”にするにはどうすればよいのか。オルタナティブ系メディア「Collective Evolution」の記事によれば、まず最初のステップとして自分が普段どのくらい不平不満を口にしたり感じたりしているのかを自覚することから始まるということだ。この自覚なしに、染みついたネガティブ思考を取り除くことはできないという。
しかし長年の習慣からある種無意識的に不平不満を口にし、ネガティブ思考をめぐらせているケースもあるだろう。特に勤務時間中などは自分で自分のネガティブさを自覚するのは困難なことかもしれない。
そこで“不平不満リストバンド”というアイディアが登場している。
このリストバンドは米ミズーリ州カンザスシティの牧師が始めてその後世界的なムーブメントとなった「不平撲滅運動(No Complaints Campaign)」で使われるもので、「不平不満を言わない(No Complaints)」という文言などがプリントされた緩いリストバンドを普段から手首にはめておき、自分が不平不満を口にしたりネガティブな考えが浮かんだことを自覚した時、このリストバンドを外してもう一方の手に付け替えることを課すのである。
このリストバンドをつけることで日常生活の中でいかに不平不満を口にしているのかが自覚できる。家族、友人、同僚にこの運動へのチャレンジを知らせておくことも重要で、自分で気づかなかった何気ない不平不満を周囲から指摘してもらうことができる。そして目指すゴールはこのリストバンドを付け替える必要がなくなった一日がやって来ることであり、さらに一定期間バンドを付け替えなかった日が続くことである。
ではこうして自分のネガティブさを自覚した次には何をしたらよいのだろうか。
米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の心理学者、バーバラ・フレデリックソン教授は、ニュートラルになった脳を“ポジティブ脳”へと作り変える手段としてマインドフルネス瞑想を推奨している。
フレデリックソン教授の研究チームが3カ月を費やした研究で、毎日瞑想する人はそうでない人よりもポジティブな感情や高揚感を多く感じていることを突き止めている。
「毎日瞑想をしている人は、精神的充実、人生の目的、社会的支援を見いだし、病気の症状を改善し続けています」(フレデリックソン教授)
マインドフルネス瞑想について、わかりやすく解説されているウェブサイトやブログ、動画などは最近ではいくつもある。そうしたリソースを活用し1日15分から20分の瞑想を続けることで脳を作り変え、人生全体をも好転させることができるということだ。気になる向きは試してみてもよいのだろう。
参考:「Collective Evolution」、ほか
参照元 : TOCANA
「ネガティブ思考」を断ち切る3つのステップ まずは受け入れることから始めよう
今年は自分の心のために、こんな挑戦はどうだろう。頭のまわりに渦巻いている、ネガティブな思考を鎮めるのだ。
ネガティブ思考は当たり前
人間は誰でも、(「くまのプーさん」のキャラクターで言うならば)ティガーよりもイーヨーのような傾向をもつ。つまり、よい経験よりも悪い経験のほうを、繰り返し思い返してしまうのだ。これは進化の結果であり、危険を避けて危機に素早く反応するのに役立っている。
しかし、つねにネガティブな気持ちだと幸福感は妨げられ、ストレスと不安のレベルが上がり、究極的には健康にも影響が出る。他人よりもネガティブ思考に陥りがちな人もいる。心理学者で、認知行動療法を行うベック・インスティテュートの代表であるジュディス・ベックは、思考のスタイルには遺伝や子どもの頃の経験が影響すると言う。
子ども時代にからかわれたり、いじめられたりすると、あるいは心的外傷や虐待などを経験すると、ネガティブな思考の癖がつく可能性があるのだ。また、2013年の研究によると、女性のほうが男性よりも思い悩みやすいという。
「人間はネガティブな経験からは過剰に学習し、ポジティブな経験からはあまり学習しないようにできている」と、リック・ハンソンは言う。ハンソンは心理学者で、カリフォルニア大学バークレー校のグレイター・グッド・サイエンス・センターのシニアフェローだ。
しかし、練習によりネガティブな思考のサイクルを断ち切り、制御することができるようになる。
ネガティブ思考をやめるための最初のステップには、少し驚かされる。それは、ネガティブ思考を「やめようとしないこと」。昇進を逃したことや、大統領選挙の結果などをくよくよと考えているとしても、「このことを考えるのはやめよう」とは自分に言い聞かせないことだ。
「自分の思考をコントロールしようとすると、心配や悩みはより深くなる」とベックは言う。
その代わりに、自分はネガティブなサイクルに入っているということに気づき、それを認めよう。自分に向かってこう言うのだ。「私は良くなかった評価にこだわっている」「私は選挙の結果にこだわっている」。
自分のネガティブなサイクルに気づき、それを受け入れることで、ネガティブ思考を鎮める方向に向かうことができる。「受け入れること」は、ストレス低減の手法であるマインドフルネス瞑想(めいそう)法の基本だ。
マインドフルネスの効果を活用するには、毎日目を閉じて瞑想する必要はない。自分の思考に気づくよう、自分を促すのだ。その際に、すぐにその思考を変えようとしたり、批判的になったりしてはいけない。
ネガティブな思考を受け入れると、その重さを減らすこともできる。心配している自分に怒ったり、心配はやめろと自分に言い聞かせたりすると、ネガティブな炎がよけいに燃え盛るだけだ。
友人へのアドバイスのつもりで考える
ネガティブ思考を受け入れたら、次はそれに挑む。
仕事での行き詰まりの例に戻ろう。昇進できなかったことで、あなたはおそらく自分の全般的な能力を不安に思い、自分を非難していることだろう。ここで、自分にこう問いかけよう。「一度失敗したからといって、なぜ実力がないということになるのか」。あるいは、こう尋ねてもよい。「私が本当はとても実力があると示せた仕事は、何だっただろうか」。
ネガティブ思考に挑むのが難しかったら、次の方法を試してみよう。あなたではなく、あなたの友人にその悪い出来事が起こったと想像する。あなたは友人にどんなアドバイスをするだろうか。では、そのアドバイスを自分に言ってみたとしたら、どうだろうか。
こうした方法はソクラテス式問答法として知られるが、オハイオ州立大学で行われた研究では、これを行うと大人のうつ症状を減らせることが示された。この研究では55人の成人が16週間の認知行動療法に取り組んだ。
研究者らは治療の様子を写した映像を研究し、セラピストがソクラテス式問答法を用いれば用いるほど、うつ症状が減少することを発見した。ソクラテス式問答法により、患者は自分のネガティブ思考の妥当性を検証でき、より現実的で幅広い視点を獲得できたのだと、研究者らは論じた。
時には、あなたの暗い考え方が有効である場合もあるだろう。しかし、未来に何が起こるかについての予測は有効でない。次のシナリオを検討してみよう。あなたのパートナーがあなたから離れ、別の相手のところに行ってしまったとする。ベックによると、「パートナーは、もう私を愛していない」という考えは正しいかもしれないが、「この先、誰も私のことを愛さない」という考えはおそらく正しくない。
続いて、ネガティブ思考に立ち向かうために、非行動から行動に移ろう。あなたが「愛されていない」と感じて心配ならば、友人や家族と連絡を取ってみよう。仕事で不安を感じるなら、これまでの実績をリストにしてみよう。あるいは、あなたの親友に頼んで、あなたの良いところや優しい人間であるところをすべて手紙に書いてもらおう。そして、その手紙を毎日読み返すのだ。
『幸せになれる脳をつくる』という本の著者でもあるハンソンは、ネガティブ思考を続けることで、何かを成し遂げられるのか自問してみるのもよいだろうと話す。競技場のトラックを走りながら自分の金銭的な問題について考え、解決策を見いだそうとしているのなら、それは役に立つかもしれない。しかし、トラックを何周もする間、次期大統領や海外の危機について頭を悩ませたところで、何も成し遂げることはできない。
ネガティブ思考のために動揺したり、打ちのめされたりしていると感じるならば、一度深呼吸をし、続けてもう一度してみよう。深呼吸のような呼吸の練習は、ストレス反応を低下させ、不安な思いを鎮めるのに役立つ。
脳がネガティブ思考に慣れてしまわないように
もしネガティブ思考のためにひどく苦しんだり、仕事やリラックスすることが難しくなっていると感じるなら、精神医療の専門家を訪ねてみることを検討しよう。特に、認知療法を専門とするセラピストが力になってくれるかもしれない(認知療法とは、しつこく不快な思考に対処するための実践的な方法を教えるものだ)。もし、あなたのネガティブ思考の源が、臨床的うつ病や強烈な不安であるならば、あなたの思考パターンの根本的な原因について専門家と話し、治療法を相談することを勧める。
どのアプローチが自分にとって最も効果的か選別しているときにも、息抜きをして、張り詰めた心を思いやろう。
「ネガティブに考え続けるほど、あなたの脳はネガティブに考えることに慣れてしまう」とハンソンは言う。彼はこう自問することを提案する。「私の思考は自分を強くしているだろうか。あるいは自分を壊しているのだろうか」。
(執筆:Lesley Alderman<コラムニスト>、翻訳:東方雅美)
参照元 : 東洋経済
今年は自分の心のために、こんな挑戦はどうだろう。頭のまわりに渦巻いている、ネガティブな思考を鎮めるのだ。
ネガティブ思考は当たり前
人間は誰でも、(「くまのプーさん」のキャラクターで言うならば)ティガーよりもイーヨーのような傾向をもつ。つまり、よい経験よりも悪い経験のほうを、繰り返し思い返してしまうのだ。これは進化の結果であり、危険を避けて危機に素早く反応するのに役立っている。
しかし、つねにネガティブな気持ちだと幸福感は妨げられ、ストレスと不安のレベルが上がり、究極的には健康にも影響が出る。他人よりもネガティブ思考に陥りがちな人もいる。心理学者で、認知行動療法を行うベック・インスティテュートの代表であるジュディス・ベックは、思考のスタイルには遺伝や子どもの頃の経験が影響すると言う。
子ども時代にからかわれたり、いじめられたりすると、あるいは心的外傷や虐待などを経験すると、ネガティブな思考の癖がつく可能性があるのだ。また、2013年の研究によると、女性のほうが男性よりも思い悩みやすいという。
「人間はネガティブな経験からは過剰に学習し、ポジティブな経験からはあまり学習しないようにできている」と、リック・ハンソンは言う。ハンソンは心理学者で、カリフォルニア大学バークレー校のグレイター・グッド・サイエンス・センターのシニアフェローだ。
しかし、練習によりネガティブな思考のサイクルを断ち切り、制御することができるようになる。
ネガティブ思考をやめるための最初のステップには、少し驚かされる。それは、ネガティブ思考を「やめようとしないこと」。昇進を逃したことや、大統領選挙の結果などをくよくよと考えているとしても、「このことを考えるのはやめよう」とは自分に言い聞かせないことだ。
「自分の思考をコントロールしようとすると、心配や悩みはより深くなる」とベックは言う。
その代わりに、自分はネガティブなサイクルに入っているということに気づき、それを認めよう。自分に向かってこう言うのだ。「私は良くなかった評価にこだわっている」「私は選挙の結果にこだわっている」。
自分のネガティブなサイクルに気づき、それを受け入れることで、ネガティブ思考を鎮める方向に向かうことができる。「受け入れること」は、ストレス低減の手法であるマインドフルネス瞑想(めいそう)法の基本だ。
マインドフルネスの効果を活用するには、毎日目を閉じて瞑想する必要はない。自分の思考に気づくよう、自分を促すのだ。その際に、すぐにその思考を変えようとしたり、批判的になったりしてはいけない。
ネガティブな思考を受け入れると、その重さを減らすこともできる。心配している自分に怒ったり、心配はやめろと自分に言い聞かせたりすると、ネガティブな炎がよけいに燃え盛るだけだ。
友人へのアドバイスのつもりで考える
ネガティブ思考を受け入れたら、次はそれに挑む。
仕事での行き詰まりの例に戻ろう。昇進できなかったことで、あなたはおそらく自分の全般的な能力を不安に思い、自分を非難していることだろう。ここで、自分にこう問いかけよう。「一度失敗したからといって、なぜ実力がないということになるのか」。あるいは、こう尋ねてもよい。「私が本当はとても実力があると示せた仕事は、何だっただろうか」。
ネガティブ思考に挑むのが難しかったら、次の方法を試してみよう。あなたではなく、あなたの友人にその悪い出来事が起こったと想像する。あなたは友人にどんなアドバイスをするだろうか。では、そのアドバイスを自分に言ってみたとしたら、どうだろうか。
こうした方法はソクラテス式問答法として知られるが、オハイオ州立大学で行われた研究では、これを行うと大人のうつ症状を減らせることが示された。この研究では55人の成人が16週間の認知行動療法に取り組んだ。
研究者らは治療の様子を写した映像を研究し、セラピストがソクラテス式問答法を用いれば用いるほど、うつ症状が減少することを発見した。ソクラテス式問答法により、患者は自分のネガティブ思考の妥当性を検証でき、より現実的で幅広い視点を獲得できたのだと、研究者らは論じた。
時には、あなたの暗い考え方が有効である場合もあるだろう。しかし、未来に何が起こるかについての予測は有効でない。次のシナリオを検討してみよう。あなたのパートナーがあなたから離れ、別の相手のところに行ってしまったとする。ベックによると、「パートナーは、もう私を愛していない」という考えは正しいかもしれないが、「この先、誰も私のことを愛さない」という考えはおそらく正しくない。
続いて、ネガティブ思考に立ち向かうために、非行動から行動に移ろう。あなたが「愛されていない」と感じて心配ならば、友人や家族と連絡を取ってみよう。仕事で不安を感じるなら、これまでの実績をリストにしてみよう。あるいは、あなたの親友に頼んで、あなたの良いところや優しい人間であるところをすべて手紙に書いてもらおう。そして、その手紙を毎日読み返すのだ。
『幸せになれる脳をつくる』という本の著者でもあるハンソンは、ネガティブ思考を続けることで、何かを成し遂げられるのか自問してみるのもよいだろうと話す。競技場のトラックを走りながら自分の金銭的な問題について考え、解決策を見いだそうとしているのなら、それは役に立つかもしれない。しかし、トラックを何周もする間、次期大統領や海外の危機について頭を悩ませたところで、何も成し遂げることはできない。
ネガティブ思考のために動揺したり、打ちのめされたりしていると感じるならば、一度深呼吸をし、続けてもう一度してみよう。深呼吸のような呼吸の練習は、ストレス反応を低下させ、不安な思いを鎮めるのに役立つ。
脳がネガティブ思考に慣れてしまわないように
もしネガティブ思考のためにひどく苦しんだり、仕事やリラックスすることが難しくなっていると感じるなら、精神医療の専門家を訪ねてみることを検討しよう。特に、認知療法を専門とするセラピストが力になってくれるかもしれない(認知療法とは、しつこく不快な思考に対処するための実践的な方法を教えるものだ)。もし、あなたのネガティブ思考の源が、臨床的うつ病や強烈な不安であるならば、あなたの思考パターンの根本的な原因について専門家と話し、治療法を相談することを勧める。
どのアプローチが自分にとって最も効果的か選別しているときにも、息抜きをして、張り詰めた心を思いやろう。
「ネガティブに考え続けるほど、あなたの脳はネガティブに考えることに慣れてしまう」とハンソンは言う。彼はこう自問することを提案する。「私の思考は自分を強くしているだろうか。あるいは自分を壊しているのだろうか」。
(執筆:Lesley Alderman<コラムニスト>、翻訳:東方雅美)
参照元 : 東洋経済
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